業務上必要な資格の取得を義務付けた場合、労働時間となるのか?

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社労士5000

【Q】業務上必要な資格の取得を義務付けた場合、労働時間となるのか?

業務上必要のある資格について、従業員の資格取得を義務付けている場合、当該資格の取得に伴う勉強時間についても、労働時間として扱う必要があるのでしょうか?

【A】勉強時間や方法など、具体的指示や会社の関与があれば「労働時間」に該当

厚生労働省が公表している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」には「使用者の指示により業務に必要な学習などを行っていた時間」について、労働時間性(=労働時間であること)を肯定しています。(=学習などの時間を労働時間と判断することがある)

つまり、資格取得や試験に関して、会社による関与や、時間や方法などによる具体的な指示などがある場合には、その資格取得や試験に伴う勉強時間も、労働時間として取扱わなければならないのです。

会社による関与や具体的な指示の有無については、個別に判断されることとなります。

「労働時間性」を否定した裁判例

勉強時間の「労働時間性」を否定(=勉強時間は労働時間ではないと判断)した裁判例は、次のような理由でした。

特定の資格を取得するよう業務命令があったものの、以下のことから、会社が具体的に指示した講習の受講や検定試験の受験については、会社の指揮命令下にある労働であったと評価することができたとしても、試験勉強それ自体を会社の指揮命令下にある労働であったと評価することは難しい、としています。

  • 会社から勉強時間について具体的な指示を受けていたわけではなく
  • 試験勉強の内容、方法及び時間は労働者の選択により決められており
  • 労働者が労働から解放された自由な時間に勉強を行うことも可能であった

「労働時間性」を肯定した裁判例

反対に、勉強時間の「労働時間性」を肯定(=勉強時間も労働時間と判断)した裁判例では、次のような理由でした。

会社が、「今回の試験に是非合格出来るよう、ご家族の皆様の全面的なご協力と共に、特に奥様のお力添えが必要でありますので・・・」としたうえで、依頼事項として、以下のように、勉強時間や家族への要請も含めて事前の準備事項など詳細な指示や注意事項が示唆されていました。

  • 「試験日まで毎日夜9時就寝、朝2時起床」、「出勤時刻まで受験勉強」、
  • 「試験日までの土、日、祝、夏季休暇、すべて勉強させてください」、
  • 「試験内容は、論文形式なので全て暗記できるよう反復して覚える様にお願いいたします」と記載した
  • 「『技術士』資格取得に向けてのお願い」と題する書面を配布する

また、以下のように、会社も論文の添削や模擬試験などにも深くかかわっていることなどを理由に、受験勉強それ自体も業務命令によるもので、会社の指揮命令下にあったとして労働時間性を肯定しました。

  • 受験者に過去問の答案提出を促したり、
  • 論文の添削をしたりしていたほか、
  • 模擬試験や模擬面接を所定就業時間中に行っている

会社による「関与の強さ」と「指示の程度」を考慮

これらの判例より、労働時間性が肯定される「使用者(会社)の指示」があったかどうかは、次の点などを考慮し、判断されることになります。

  • 資格の取得や試験に向けた会社の関与の程度
  • 勉強時間や内容、方法について、会社が具体的な指示をしていたか

会社として資格取得を義務付けているのであれば、会社による関与は強いと言えるでしょう。

従って、勉強時間や内容、方法に関する指示の程度によっては、労働時間性を肯定される、つまり、勉強時間も労働時間であると判断される可能性があると言えます。

まとめ

後から、資格取得や試験の勉強時間を労働時間と判断されることになれば、当然その時間に対する未払いの賃金として支払わなければなりません。

未払い賃金の時効は、賃金支払い期日から3年であることから、難関資格や合格に時間がかかっている場合には、最大で3年分の未払い賃金を支払わなければならないことも発生するため、会社として、資格取得や試験をどのような位置づけにするのかは、明確に決定し、定めておく必要があると言えます。