未払い残業代を請求された際の「会社側の反論パターン」11選【2022年12月17日】

近年、未払い賃金の請求が増えてきおり、会社側としてみれば戦々恐々の面持ちといったところではないでしょうか。

実際に未払い賃金であったのであれば、対応をしなければなりませんが、中には何の根拠もないのに、自身の勝手な解釈で、未払い賃金として請求してきている例も多くあります。

そういった場合の会社側の反論にはどのようなものがあるのか、解説していきます。

社労士5000

会社側の反論パターン

反論内容には、パターンがあります。基本的な反論のパターンとしては、11個をピックアップしました。1つ1つみていきましょう。

1)雇用契約ではないから、労基法(時間外手当)の適用はない!

原告が労基法で定めるところの「労働者」に該当しなければ労基法に従った時間外手当の支払義務は負いません。

契約関係が業務委託契約であったり、請負契約であったりする場合、使用者としては、雇用契約締結の主張を否認し、時間外手当の支払義務を争うことになります。

2)基準賃金が異なっている!

時間外手当は「(基準賃金)×(割増率)×(時間外労働の時間数)」により、算出します。

基準賃金の算出方法については、労働関係法令において定められていますが、原告の請求がそのルールに従っていない(本来の定めよりも高額になっている)場合に、その旨主張して、請求を争っていくことが考えられます。

3)割増率が異なっている!

割増率は、労基法の規定もしくは就業規則等の定めによって決定されますが、例えば、就業規則の定めとは異なる割増率を主張しているなど、割増率に関する労働者側の主張が事実に反する場合には、その旨反論を行うことになります。

また、週休2日制などの場合で、所定休日を法定休日と同様の割増率である35%で計算しているなど、割増率が異なる場合にも、その旨の反論を行うことになります。

4)監視労働や断続的労働の対象だった!

労働関係法令では、監視または断続的労働に従事する者で、会社側が行政官庁の許可を受けたものについて、労働時間、休憩および休日に関する規定についてはその適用を除外しています。

そのため、原告が監視労働または断続的労働に従事する者に該当する場合で、かつ行政官庁(労働基準監督署長)の許可を受けている場合には、会社側としてはその旨主張することで、時間外手当の支払義務を免れることができます。

なお、深夜業割増部分については適用除外とされないので、注意が必要です。

5)従業員側の主張時間に誤りがある!

従業員側の請求根拠としている労働時間が、会社側が把握している労働時間と合わないケースです。

反論としては、以下のような反論が考えられます。

  • タイムカードなどの客観的な資料がない場合に、原告の主張している労働時間が信用できない
  • 原告の主張している時間は労基法上労働時間とは認められていない時間が含まれている
  • 原告の主張している時間には休憩時間が含まれており、労働時間には該当しない

6)管理監督者または機密事務取扱者の地位にあった!

法律上の管理監督者もしくは機密事務取扱者であったという反論です。

これらの地位にあるものは、労働時間、休憩および休日に関する規定の適用が除外されます。

そのため、請求者である労働者が、管理監督者に該当する場合には、その旨主張することで、時間外手当の支払義務を免れることが可能となります。

なお、深夜業割増部分については適用除外とされないので、注意が必要です。

7)残業を禁止していた!

業務命令に基づくものではなく、労働者の自発的な意思に基づく残業であったケースなどです。

原則として、残業を命じていなければ、その時間については指揮命令下にはないに関になるので、その時間については労働時間ではないと主張していくことになります。

ただし、例えば、残業をするよう命令はしないないものの、担当する業務が定められており、それを処理するためには所定労働時間を超えて労働しなければならないため、なし崩し的に時間外労働を行っているような場合や、残業をしていることを認識しながらそれを放置していた場合には、いわゆる「黙示の指示」があったと判断されることが多くあります。

8)変形労働時間制や事業場外のみなし労働者、裁量労働制などが適用される労働者である!

それぞれ細かな制度は違いますが、原告の労働者が、実際の労働時間に基づき時間外手当の請求を行ってきた場合でも、これらの制度が適用される労働者の場合には、実労働時間に対応する時間外手当が発生しないことがあります。

そのため、会社側としてはその旨を主張することで、各制度ことに時間外手当の支払義務が発生しない部分については、支払を免れることができます。

9)請求の消滅時効が完成している!

賃金債権については、労働基準法により、消滅時効期間は2年間(退職手当を除く)と定められています。

消滅時効期間が経過したものについては、会社側が時効を援用する意思表示を行った場合には、その賃金債権は消滅することになります。

請求された日から2年前以前の者に関しては、時効の援用を主張し、支払いを免れることができます。

10)請求されている未払いとする賃金は、基本給や手当に含まれている!

固定残業代などの項目により、基本給や手当に含まれてた場合には、既に支払い済みであるとして、支払を免れることになります。

11)請求権を放棄していた!

時間外手当の請求権が発生している場合であっても、以下の条件を満たした上で、従業員がその請求権を放棄している場合には、いったん発生した権利が消滅することになり、支払を免れることになります。

  • 労働者が賃金債権について放棄の意思表示をしたこと
  • その放棄が自由な意思に基づくものであること

まとめ

労働者側は、かなり「盛って」請求してくることがあり、請求をされたからと言って、必ずしも全てが法律上支払われなければならないものという訳ではありません。

払う必要のないものまで支払わないように、請求の根拠を確認するようにしましょう。