コロナ禍で、企業が人件費を削減する5つの方法【解説】

社労士5000

コロナ禍で人件費を削減したい

コロナ禍で、経営が厳しくなっている会社も多くなっています。その中で、人件費を削減したいという要望があります。

人件費削減を検討するにあたっては、紛争を予防・回避し、レピュテーションリスクを防ぐため、従業員の雇用を維持し、労働契約の内容をできるだけ変更しない方法を検討すべきです。

その意味で、人件費の削減を検討するにあたっては、次のような順番で検討する必要があります。

  1. 契約内容を変更しない形での人件費削減
  2. 契約内容を変更する形での人件費削減
  3. 有期労働契約の終了

雇用調整助成金を活用した休業

新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、その雇用する対象労働者の雇用の維持を図るために、労使間の協定に基づき雇用調整(休業・教育訓練・出向)を実施する事業主は雇用調整助成金の支給を受けることができます。

有期労働契約社員を休業させて社員に休業手当等を支払い、国から雇用調整助成金を受けるという方法で、会社は有期労働契約社員の人件費を削減することができます。

これは、厳密に言えば、人件費の支出額自体は削減されていないのですが、雇用調整助成金の支払を受け、持出しを減らすことで、実質的に人件費削減の目的を達成する方法です。

シフトの削減

現在の有期労働契約において、所定労働日・所定労働時間が具体的に決まっていない場合、たとえばフリーシフト型の契約内容となっている場合には、契約内容を変えずにシフトを減らすことにより人件費を削減することも可能です。

もっとも、本当にフリーシフト型の契約内容といえるのか、従業員が希望シフトを提出しても会社側の裁量でゼロシフトにできるのかなどといった点は労働契約の解釈の問題となりますので、契約書の文言などから安易に判断しないことが重要です。

ただ、フリーシフト型の契約内容であったとしても、一度シフトを確定させた後に決められた出勤日を休ませる場合には、少なくとも休業手当の支払が必要となりますので注意してください。

有期労働契約で定められた内容の変更

ワークシェアリング(休日増・労働時間短縮)

労働時間当たりの賃金額を変えずに労働時間を短縮することにより人件費を削減する方法です。

労働時間短縮の実施方法としては、労働契約の内容を一部変更して所定休日を増やす方法と所定労働日における所定労働時間を短縮させる方法とがあります。

労働時間も労働契約の重要な要素であり、これを減らすことは労働条件の不利益変更に当たります。

裁判例では「そもそも賃金は労働の対価として支払われるものであることからすると、所定労働時間が短縮するなどして労働量が減少する場合は、これに対応して減少する性質を本来的に有しており、このような賃金の本来的性質は労働時間の短縮に伴って賃金を減少させることの合理性を判断する上で積極的な要素となる」と判示しています。

つまり、労働時間当たりの賃金額を変更しないワークシェアリングは、合理性が認められる可能性が高く、また従業員の納得を得やすい方法です。

したがって、次で解説する賃金額の変更を検討する前に、まずはこのワークシェアリング(週休3日などの休日増や労働時間短縮)の方法を検討するのがよいです。

賃金額の変更(減額)

有期労働契約の賃金額の変更(減額)については、契約社員の給料を減額する場合の注意点を弁護士・社労士が解説 で解説しています。

契約社員の給料を減額する場合の注意点を弁護士・社労士が解説

契約期間中に賃金額を変更する方法ではなく、契約更新のタイミングで賃金を減額した新しい契約を提示する方法を原則とすべきです。

有期契約の終了

業績不振など経営上の理由による雇止めについては、事前に裁判の結論を予測するのは困難です。

また裁判の結論にかかわらずそもそも法的紛争が生じること自体が企業のレピュテーションリスクにつながることから、すぐに雇止めを考えるのではなく、まずは合意による退職を目指すべきでしょう。