契約社員の給料を減額する場合の注意点を弁護士・社労士が解説

社労士5000

コロナ禍で、給料って減額できる

新型コロナウイルス感染症の拡大や緊急事態宣言の影響で、会社の売上が激減し、極めて深刻な経営状況に陥っている。

今般の情況を踏まえ、有期労働契約社員は基本的に1年契約だが、人件費削減のため、賃金額を変更(減額)する対応を講じたい。

この場合、どのように給与の減額を進めるべきでしょうか。

契約更新のタイミングで賃金を減額するのが原則

有期労働契約は、「当該契約期間はこの賃金で雇用します」という約束です。そのため期間途中で雇用を終了したり賃金額を変更したりすることは本来的には予定されていません。

よって、有期労働契約で定められた賃金を減額するのであれば、契約更新のタイミングで賃金を減額した新しい契約を提示することが原則です。

裁判例でも、次のように判示しています。

有期労働契約において期間途中での賃金額変更は本来的に予定されておらず、「期間の定めのある労働契約を締結している労働者は・・・(中略)・・・当該契約期間内に限っての雇用継続及びそれに伴う賃金債権の維持については期待が高く,その期待は合理的なものと評価すべきである」、「臨時従業員が契約により定めた雇用期間中の賃金債権の維持についての期待は保護されなければならない

やむを得ない事情があるとして、期間途中の賃金減額を行おうとする場合、方法としては以下の3つの方法が考えられます。

  1. 就業規則を変更(新設)する
  2. 労働協約を締結する
  3. 新たな個別合意を取得する

就業規則を変更(新設)する

(1)の就業規則変更(新設)に関しては、特に有期労働契約労働者の場合、個別の労働契約書に記載された賃金は、法律上の「労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分」に該当し、就業規則の不利益変更を実施しても、賃金額の一方的減額はできないと判断されるリスクがあります。

労働協約、労使協定締結

労働協約や労使協定は、経営者側と労働者側(労働組合・労働者の代表者)との合意です。

この締結に関しては、契約期間途中の減額という特別の不利益を受ける契約社員の意見を丁寧に意見集約できているかという点が問われることとなります。

個別同意

個別同意に関しては、契約期間途中の減額という特別の不利益を受ける内容の合意が真に自由な意思に基づきなされたものであるかという点が判断されます。

ちゃんとした書面を締結する、説明も丁寧にするなどの対応が必要です。

以上のように、給料の減額については方法があります。ただし、減額する場合でも、上記のように慎重にする必要があります。

更新のタイミングで提示したを拒否された給与を拒否した場合

更新のタイミングで新しい契約を提示すること自体は自由ですが、給与を減額した契約を従業員が拒否した場合に当然に雇止めができるかというと、それは別の問題です。

このような雇止めの可否については、雇止めの合理性判断の中で、就業規則による労働条件不利益変更法理と同様の判断要素(必要性と不利益の程度の比較等)により、新たな低い労働条件提示(一方的賃下げ)の合理性の有無が問われる形で判断されることになります。

そう簡単には認められないことに注意が必要です。