有期契約社員を試用期間中に解雇することが有効になる場合【裁判例で解説】

Pocket

社労士5000

有期契約社員を試用期間中の解雇はできるか

試用期間といえども、解雇をするとなると、ハードルが高いです。そんな中、試用期間中の解雇が認められた裁判例が出ました。

ある企業が、2年間の有期雇用契約(3か月の試用期間あり)を結んだ社員について、コミュニケーション能力の不備を理由に試用期間満了時に解雇したところ、社員 が賃金仮払いの仮処分等を求めて申し立てた事案です。

結論として、裁判所は、2年間の期間限定の雇用であることを考慮しても、Yが試用期間終了をもって解雇を選択したことはやむを得ないとし、解雇に合理性、相当性が認められるとして、解雇を有効と判断しました。

この裁判例において、どのような事情が重要視されたのか見ていきたいと思います。

コミュニケーション不足という事情

上記の裁判においては、以下のような事情がありました。

  • 採用後初めてのランチミーディング会議において「食べている時に話したくない。」などと話し合い自体をはねつけるような発言
  • 管理職、マネージャーと当該社員との間で 、今後について話し合われた会議において、チームリーダーは、当該社員のコミュニケーション能力不足を指摘、指導
  • 本件会議の後 、社員はミーティングで最低限の発言すらしようとせず、素っ気ない態度に終始
  • 社員は無断で試験時期をずらしたり、勤務時間内にボランティアに参加した
  • 当該社員は、このように注意指導後も、態度を改めず、むしろチームリーダーや同僚とのコミュニケーションを拒絶するようになってしまった

裁判所の判断

裁判所は証拠として提出された反訳(書き起こし)をもとに本件会議でのやり取りを認定し、チームリーダー及び取締役が、 社員のコミュニケーション上の問題点を伝えようとしているにもかかわらず、社員は自身の問題点を省みる姿勢に乏しく、自身の意見に固執する姿勢が見てとれると判示しました。

また、本件会議でのやり取りや、当該社員が仮処分手続の準備書面において、失礼と言われたので発言を控えるようにしていたと主張していることから、当該社員がミーティングの場で最低限の発言すらしようとしなかったことや、職場で求められる最低限のコミュニケーションの域に達していなかったことを認定しました。

このような判断をもとに裁判所は、社員にコミュニケーション等の問題点があり、それが試用期間の延長によって悪化したという経過からすると、Xの改善の見込みは薄く、雇用継続されると Xのコミュニケーション上の問題によってさらに職場環境が悪化していくことが容易に想像できるとして、本件解雇を有効と判断しました。

解雇有効のための事情

本件の争点として、有期契約期間の試用期間満了時の解雇についてどのように判断するかという点があります。

有期契約については、法律で「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」と定めており、無期契約における解雇よりも厳しく判断されています。

しかし、上記の裁判例でも「2年間の期間限定であることを考慮」するといえ、有期契約の試用期間中の解雇については、厳しく判断されるとしています。

しかし、上記裁判例では、会社側の裁量を広く認めています。解雇事由にあたる具体的事実としては、反訳をもとに認定した本件会議でのやり取りくらいかと思いますが、そのほかの点についても裁判所は 社員にコミュニケーション上の問題があったと推認しています。

本件会議での社員の反論、反発が相当なものであり、裁判所もこの点を重視して社員に改善の余地なしと判断したのだと思われます。

録音や反訳といった生の事実を記録した証拠が裁判所に与える影響は大きいのが分かります。