退職する社員の中には、自分はもう辞めるからと言って引継ぎをせずにいなくなってしまうことが多々あります。
ひとつの業務を複数人で対応するのではなく、従業員個人が担当として扱っている場合には、概要程度は管理者も把握しているでしょうが、詳細についてまでは共有できていないことも多くあります。
会社としては、少なくともお客様に関わる事項については、確実に漏れなく情報を回収したいところです。
退職する従業員に確実に引継ぎをさせるためには、会社としてとれる対策はあるのでしょうか。
引継ぎすることを義務として、ルール化する
会社がまずとるべき対策としては、就業規則において、退職または解雇の際には、会社の指定する者に対して、業務の引継ぎをしなければならない旨の規定を明記し、引継ぎを義務化しておく必要があります。
特に、就業規則に義務として明記しておくことで、万が一引継ぎが行われなかった場合には、懲戒処分に該当させることができる可能性があるのです。
懲戒解雇などとなれば、転職などへの影響も考えられることから、引継ぎ義務違反を防止させる効果も期待できます。
できる限り、就業規則を整備し、引継ぎが義務であること、また、懲戒の規定を設けるようにしましょう。
退職金制度がある会社は、引継ぎが完了したら、退職金が支払われる制度とする
退職金制度がある会社においては、退職金の支払い要件として、「引継ぎが完了していること」とすることが、非常に効果的です。
お金にかかわる事項であるため、退職金をあきらめてまで引継ぎをしないという選択肢をとることは少ないと考えられます。
会社としても、それでも引継ぎをしなければ、退職金を支払う必要はないので、引継ぎがされないことによる損害は免れませんが、引継ぎをしないにもかかわらず退職金を支払うという事態までは避けることができます。
また、引継ぎ完了が退職金の支払い要件となっていれば、急な退職や、突然来なくなることによる退職を阻止することにもつながります。
最終給与を手渡しとする規定を設ける
退職金の制度がない会社では、金銭的な部分で縛りを付けることが難しいと考えるかもしれませんが、他にも対策はあります。
それは、退職する社員の最後の給与の支払いを銀行口座振り込みではなく、現金で直接手渡しにより支払う制度を設けることです。
引継ぎ義務とする旨に併せて、最終給与を手渡しとする制度を設けることで、最終給与を受け取るため、または、金銭的な損失を防ぐためにも、退職金の支払い要件と同様、引継ぎ義務違反や、突然来なくなることによる退職を抑止することができるのです。
1か月分の給与額となると、かなりの額になることが予想されますので、それをあきらめてまで、引継ぎ義務を守らないという選択肢を取ることは、容易ではありません。
それでも引継ぎがされなければ、退職金の支払い要件時と同様、引継ぎされないことによる損害は免れませんが、引継ぎがされないにもかかわらず、給与も通常のとおり支払うといった退職社員が得をするような状態は防ぐことができます。
また、引継ぎに関すること以外にも、備品の返却などのためにも効果があります。
なお、引継ぎをしないことにより支払い義務がなくなるわけではないので、引継ぎをしなくても、実際に給与を受け取りに来た場合には、必ず支払う必要がありますので、その点は注意が必要です。
まとめ
退職する社員にとっては、辞める会社についてはどうでもいいと思われがちなため、善意やモラルに任せるのではなく、明確にルールとしておく必要があります。
場合によっては、罰則なども適用できるよう、制度作りを考える必要があるのです。