休職期間満了の社員を円満に退職させるためには?

休職の制度を設けている会社では、休職期間を満了した場合の当該従業員の扱いについて、問題になることが多くあります。

休職期間を満了したことにより解雇や退職などの扱いをする場合には、労働者にとっては収入源を失うことから、トラブルが発生することが非常に多く、適切な労務処理が必要です。

休職期間満了による退職・解雇がトラブルにならないようにするためには、どのような進め方をすればよいでしょうか。

社労士5000

休職期間満了による退職・解雇の規定

休職期間は、法律上、定めなければいけない規定ではないため、会社によっては休職の制度を設けていない場合もありますが、休職の規定を設けている場合には、休職期間があらかじめ決められており、その休職期間を満了までに復職ができなかった場合には、雇用関係を終了する、といった規定が盛り込まれることが一般的です。

この「雇用契約を終了する」の扱いとしては、解雇とする場合と退職自然退職)とする場合があります。

就業規則の規定の仕方で見ると、「休職期間の満了までに復職できない場合には、解雇とする。」とった解雇として処理する旨の文言か、「休職期間の満了までに復職できない場合には、退職の扱いとする。」といった退職として処理する旨の文言といった規定になります。

これらの規定により、休職中の従業員との雇用関係を休職期間の満了を理由に終了させる労務処理が、「休職期間の満了による退職・解雇」です。

起こりやすいトラブル

休職期間が満了した場合に、退職や解雇といった扱いにすることは、それ自体、違法なことではありません。

しかし、正しい手続きに則って処理をしないと、不当解雇などの問題が発生することが非常に多くあります。

不当解雇のトラブルと言うと、規定を「退職の扱い」としておけば問題ないのではないか、と考えるかもしれません。

現に、不当解雇とならないようにするため、規定を「退職の扱い」としているといった会社も多くあります。

しかし、実際には「解雇とする」とした場合でも、「退職の扱い」とした場合でも、当該事案の状況などによっては、不当解雇であると判断されることがありえます。

規定の文言を「退職の扱い」としたから大丈夫!という訳ではないのです。

退職や解雇として処理する場合の会社側のポイント

休職期間満了後、退職や解雇として処理する場合、会社側には注意すべき3つのポイントがあります。

(1)休職期間満了後の退職・解雇は違法という訳ではない

休職期間満了後、復職できなかった場合に、退職・解雇の手続きをとることは、就業規則の規定に則り、正しい運用の基に実施する場合には、必ずしも違法なことではありません。

裁判例からも、休職期間1年6ヶ月程度での退職扱いを適法とした判決も複数あります。中には、休職期間90日での退職扱いを適法としたというケースも存在します。

期間については、各事案により事情が異なるため、これらの日数なら必ずしも認められるという事ではありませんが、休職期間満了後の退職・解雇は認められる余地はあるという事です。

会社側としては、トラブルに臆することなく、必要であれば退職・解雇といった手続きを検討する必要があるでしょう。

ただし、次の2、3で記載する事情の場合には、例外として退職・解雇が認められず、不当解雇となる恐れがあります。

(2)「ハラスメント、長時間労働、退職強要などに起因する精神疾患等」が休職の原因である場合は、不当解雇と判断されることも

休職の原因が、「ハラスメント、長時間労働、退職強要などに起因する精神疾患等」であって、その休職期間満了後、退職・解雇の処理をした場合には、過去の裁判上、不当解雇であると判断されています。

これは、精神疾患を発病・悪化させた原因は、会社側にあると判断されるためです。

会社側としては、精神疾患による休職の場合には、その原因が会社側にないかどうかをしっかり確認しておく必要があります。

(3)医師が復職可能と診断しているにもかかわらず、復職を認めず退職・解雇とした場合は、不当解雇であると判断可能性が高まる

医師が復職可能と判断しているにもかかわらず、会社側が復職を認めず、そのまま休職期間が満了したことにより、退職・解雇の処理をした場合には、過去の裁判上、不当解雇であると判断されていることがあります。

会社側としては、会社だけで判断をせず、医師の診断や意見を考慮した上で、最終的な処理を検討する必要があります。

不当解雇であると判断されると・・・

過去の裁判例では、不当解雇であると判断された場合で、当該労働者が復職したい場合には、雇用契約は継続しているものとされます。

また、退職・解雇とされていた期間は、未払い賃金として支払いを命じられることもあります。
事案によっては、慰謝料などの支払いが必要なる場合もあります。

過去の例では、総額3000万円程の支払いを命じられている事案もあるので、会社側としては、休職期間満了による退職・解雇の処分の際には、細心の注意を払う必要があるでしょう。