従業員がパソコンを破損!弁償させられるのか?備品の紛失・破損について【2021年11月加筆】

業務を遂行する上で必要な備品については、会社で用意しなければなりません。

その中でも、パソコンやスマートフォンなどは、どういった業種の事業でも、必ずと言っていいほど必要であり、従業員一人ひとりに貸与する中でもとりわけ高額な備品となります。

特にパソコンは必ずと言っていいほど個人用として支給されますが、貸与された従業員がこのパソコンを紛失や破損をしてしまった場合、会社としてはどのような対応ができるのでしょうか。

社労士5000

弁償させることは可能なのか

そもそも、備品を破損・紛失をさせた従業員に対し、弁償をさせることは可能なのでしょうか?

従業員へ賠償を請求すること自体は、就業規則にその旨の定めがあれば可能です。

備品だけにとどまらず、広く、会社に損害を与えた場合には、会社が被った損害賠償を請求することがある、といった規定を置くことができます。

規定があれば請求は可能、であるため、反対に規定がなければ、通常請求は難しいと言えます。

稀に「●●をした場合には、××万円」「△△を壊したら、■■万円」などといった規定のしかたをしている企業がありますが、あらかじめ賠償金額を決めておくことは、「賠償予定」といい、このような規定は法律で禁止されていますので、規定を設ける際には注意が必要です。

全額を弁償してもらうことは可能なのか

パソコンなどの高価な備品を破損・紛失されてしまった場合、会社としてはその分を弁償してもらいたいと考えるのが普通かと思います。

その際、破損・紛失をしたものの購入価格の全額を弁償させようとする企業が多くあります。

会社側としては、使えたものを使えない状態としたのだから全額弁償してもらって当然と考えるかもしれませんが、賠償の額について従業員と争いになった場合、過去の裁判例からみると全額の弁償が認められたケースはほとんどありません。

注意不足などの過失の度合いや、購入からの期間などにもよりますが、多くは1/4程度から高くても半額くらいが一般的です。

過度な請求をすると後にトラブルとなる可能性があるので、請求額を決める際には、購入価格だけでなく、耐用年数や減価償却、本人の過失なども踏まえて検討するようにしましょう。

弁償額と給与の相殺

多くの会社は、弁償額の支払いを確実なものとするために給与との相殺や給与からの支払いを行おうとしますが、給与から控除する形式の支払いはできません。

給与から何らかの金額を会社側が控除する場合には、法律で定めるもののほかは、労使協定による定めをあらかじめしていなければなりません。

かってに控除や相殺を行うと、会社側が給与支払いについて違反の状態となります。

弁償に同意していたとしても、必ず現金や本人からの振り込みにて対応するようにしましょう。

まとめ

以上のように、備品の破損・紛失を賠償させること自体は可能ですが、その全額を弁償させるというのは難しいと考えられます。

高額な備品を貸与している場合には、破損・紛失による賠償がある旨の規定を必ず作成し、従業員にはしっかりと周知をし、扱い方について教育するようにしましょう。