兼業や副業が発覚した従業員に対する処分とは?就業規則に反したら懲戒処分できる?

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2018年、厚生労働省が発表するモデル就業規則の兼業や副業を禁止する規定が、兼業や副業を容認する内容に変更され、「兼業や副業の解禁」などと盛り上がりました。

兼業や副業の容認は会社の自由であるため、決して兼業や副業制度を導入しなければならないわけではありませんが、大手企業の導入による後押しもあり、兼業や副業制度を導入する企業、兼業や副業をしようと考える人が増えてきており、政府の働き方改革では兼業や副業が推進しています。

このような状況の中、2017年の調査によると約77パーセントの企業が兼業や副業を禁止しています。

兼業や副業を推奨する昨今の風潮の中ですが、兼業や副業を禁止したい企業は、兼業や副業が発覚した従業員に対し、懲戒等の処分を行うことができるのでしょうか。

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兼業や副業とは

「兼業」は法律などで厳密に定義されている言葉ではありませんが、一般には従業員が職務以外の他の業務に従事すること、又は自ら事業を営むことといった意味で使われています。

「副業」もまた、法的に定義はなく、主な仕事以外に就いている仕事のことで、本業よりも低い労力で行う仕事といった意味で使われています。

兼業や副業は会社の勤務時間外に行われることから、原則としてはプライベートな時間に行う兼業や副業を会社が一切合切禁止することはできません。なぜなら、プライベートな時間に何をしようが本来従業員の自由だからです。

しかし、絶対的に兼業や副業が認められるわけでもありません。これまでの裁判例の中でも兼業や副業が認められ会社の行った懲戒解雇が無効となったものと、禁止される合理性があると認められて懲戒解雇が有効となったものがあります。

兼業や副業が問題となった裁判例

兼業や副業により解雇されたが、その解雇が無効と判断されて事例としては、運送会社で家電製品を小売店に配送する業務に従事していた原告が、運送先の小売店から家電製品を引き取ってリサイクルショップに持込み代価を受けていたことが発覚し、懲戒解雇された事案や、紙製品の販売会社の社員が、妻の経営する競業他社の営業に関与していたところ懲戒解雇された事案などがあります。

反対に、兼業や副業による解雇が有効であるとされた事例としては、商品部長が競業会社を経営したこと、商品納入会社にリベートを要求したことを理由として懲戒解雇された事案や二重就職を懲戒事由とする就業規則の規定に基づき、勤務時間外にキャバレーで会計係等として就労していた原告が懲戒解雇された事案、また、従業員が競争会社の取締役に就任していることを理由として就業規則にもとづき懲戒解雇された事案などがあります。

これらの有名な判例は、今でも基準の一つとして考えられています。

兼業や副業に対する処分を有効にするためには

このように懲戒解雇が有効・無効と判断が分かれるのはなぜでしょう。近年の裁判例によりますと、禁止されている兼業や副業は、以下のようなことを指すと考えられています。

  • 過重労働となり、本来の勤務に支障を生じる場合
  • 営業の秘密が漏洩する恐れがある場合
  • 競業他社に就業して会社の利益を害する場合
  • 会社の信用を失墜させる恐れのある場合

裁判例によると、これらの場合に該当するか否かは、兼業や副業の期間、時間、業務内容等総合的に考慮して判断することとなります。

このことから、兼業や副業の期間・時間が短かったり、業務内容が本業と競業しなかったり、簡易な業務で本業に支障をきたすものでない場合などには、会社は当該従業員に対して懲戒処分を行うことはできないものと考えられます。

また、上記の場合に該当するとしても、解雇権の濫用禁止により解雇できない場合もあります。

まとめ

政府が兼業や副業を推進していること、インターネットの普及により自宅でも仕事が行える状況になっていることなどから、今後兼業や副業を行う者は増えていくと考えられます。そのとき、会社は兼業や副業を禁止した就業規則に反するからという理由だけで簡単に懲戒処分を行うことはできません

会社側としては、就労時間の把握や健康状態の把握、禁止事項の徹底周知等、兼業や副業に対する明確なルール作りが重要になるのです。