社員の育児に関する会社の義務「育児時間」とは?

「育児休業」については、既に広く知られており、中小・ベンチャー企業でも、自社の社員で育児休業制度により休業したことがあるといった企業も多いのではないかと思います。

育児休業制度は、法律により定められた事業者の義務でありますが、同じく、法律により定められている育児関連の制度で「育児時間」制度をご存じでしょうか。

育児休業に比べ認知度が引く、また、会社として対応したことがないといったことから、どういった制度なのかあまり理解していない企業や人事担当者も多くいるようです。

今回は、「育児時間」制度とその運用方法について解説いたします。

社労士5000

「育児時間」とは

育児時間とは、生後満1年に達しない生児を育てる女性は、休憩時間のほかに、1日2回、各30分以上の生児を育てるための時間を請求することができるというものです。

また、会社は、育児時間中はその女性を使用してはならないとされています。

この育児時間は、労働基準法により定められたもので、全ての企業に対する義務となります。

育児時間には、次のようなポイントがあります。

(1)労働者による請求が必要

労働者から請求があった場合には、会社は育児時間を与えなければならないと定められているので、請求がなければ、会社は育児時間を与える必要はありません。

(2)女性のみ

育児時間を取得できるのは、女性のみと法律上規定がされています。

育児休業は男性でも請求することができますが、育児時間については、男性社員による請求は認められません。

(3)利用時間

育児時間は「労働時間の途中」に与えるものとされています。

もっとも、法律上の休憩時間と違い、所定勤務時間の始めや終わりに利用することも認められています。

(4)時短勤務の場合

育児時間の法律は、1日の法定労働時間である8時間を基準とし、1日2回各30分としていますが、1日の所定労働時間が4時間以下である場合には、1回の付与で足りるとされています。

(5)給与の支払いは会社の任意

育児時間中を有給とするか無給とするかは、当事者間(労働者と使用者の間)の取り決めにより自由とされています。

「育児時間」の使い方

通常の休憩時間は、基本となる所定労働時間に対して、その始めや終わりに取得することはできません。(9時~18時勤務で1時間の休憩時間がある場合、9時~10時または17時~18時を休憩時間とすることはできません。)

しかし、育児時間は、基本となる所定労働時間に対して、その始めや終わりに取得することも認められます。(9時~18時勤務の場合、9時~9時半または17時半~18時を育児時間とすることも可能です。)

また、「1日2回各30分」を一つにまとめて「1回1時間」とすることも可能です。

まとめた場合でも、所定労働時間の前後に取得する(「1時間遅く出勤」「1時間早く退勤」)ことは可能です。当然、勤務時間の間での取得も問題ありません。

「育児時間」制度に対する会社の制度規定

育児時間は、会社に法律上求められる義務である以上、求められれば応じなければなりませんが、会社としてどのように運用するかは、就業規則にルールを定めておくことが望ましいと言えます。

特に就業規則に定めておく必要のあることは、育児時間中は有給であるか無給であるかです。

これは会社の自由なので、トラブルにならないよう、明確に定めておく必要があります。

また、育児時間の申請手続きなども、必要である場合には定めておく必要があります。

育児時間がある旨を含めて、その手続きや賃金の扱い等を就業規則に定めておくようにしましょう。

罰則もあります

社員の請求に対し育児時間を与えないことは、違法行為であり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

育児時間は、就業規則に定めがなくても、法律により定められた会社の義務となるので、自社に規定がなくても請求されれば与えなければなりません。

まとめ

あまり知られていない育児に関する制度ですが、請求されてもスムーズに対応ができるよう、経営者や担当者はあらかじめ準備をするようにしましょう。