台風や地震など「自然災害」により欠勤する場合、給与はどうなるのか?

平成は災害の時代などと言われることもあるくらい、自然災害が多かったと言われています。

四季がある分、その季節ごとの災害があったり、地震大国と呼ばれるくらい地震があったりと、その災害は様々です。

自然災害が発生すると、公共交通機関がマヒすることから、出社や退社が困難になるということがあると思います。

会社としては、自宅待機を命じたり、早めの帰宅を命じるなどの対応をすることになるでしょう。

そのような場合に休業となった時間の賃金はどのような扱いになるのでしょうか

今回は、自然災害時における休業と賃金について見ていきたいと思います。

社労士5000

自然災害でも、原則、「ノーワークノーペイ」

就業しなければならない日や時間に、就業ができない場合というのは、主に次の要因が考えられます。

  1. 使用者の責任によるもの(資材不足や設備の故障など)
  2. 労働者の責任によるもの(病欠や遅刻早退など)
  3. 不可抗力によるもの(天災など)

自然災害といった、会社側の責任でも、労働者側の責任でもなく、いわゆる上記③の不可抗力により就業ができない場合であっても、原則的には、「ノーワークノーペイの原則」つまり、働いていない時間分については、報酬は発生しないといった原則が適用されます。

上記1の場合には、休業手当などの会社としての補償が必要になりますが、自然災害やそれに伴う公共交通機関のマヒなどといった労働者側にも会社側にも責任がない事由によって、就業ができない状態となった場合に関してまでは、会社側が賃金やそれに相当する補償などを支払うなどの責任を負う義務まではないのです。

なお、ここで言う不可抗力とは、以下の両方に該当するものであることが必要とされています。

  1. 原因が、事業活動以外の要因により発生した事故であること/li>
  2. 事業主が、事業をするうえで最大限の注意を尽くしたとしてもなお、避けることのできなかった事故であること

会社側の責任であった場合は、休業手当が必要となることも

欠勤や遅刻早退などの就労ができなかった、労務が提供できなかった原因が、会社側の責任によるという場合もなかにはあります。

例えば、資材や設備が必要な業務であるにもかかわらず、それが用意できなかった場合などが挙げられます。

こういった場合については、会社は労働基準法に基づき、「休業手当」を支給する必要があります。

休業手当とは、平均賃金の100分の60以上の手当を指します。

上記のような、自然災害、例えば台風が接近している場合で、公共交通機関がマヒしてしまうことが予想されるため、本来の終業時間より早く業務を終わらせ、各従業員を帰宅させるといった場合、実際にはまだ災害が発生していない状態であることから、「不可抗力により就業ができなかった」とまでは言えず、早く業務を終わらせたことは会社の責任で労務の提供を中断させたこととなり、休業手当の支払いが必要となるのです。

つまり、同じ自然災害でも、ノーワークノーペイの原則は成り立たず、賃金カットはできないということになります。

法律の直接の適用は、モチベーション低下につながることも

実際に、不可抗力によるノーワークノーペイの原則として遅刻や早退まで細かく控除している企業はあまり多く見かけませんが、欠勤となると、欠勤控除としている企業は多くあります。

もちろん、これらの手続きは法律上なんら問題のない労務対応ではありますが、労働者からしてみると、自身の責任ではないにもかかわらず、「ノーワークノーペイだから無給」となってしまうと、労働者のモチベーションに影響する可能性が考えられます。

当然、当初から自然災害時にも無給となることがルールになっていたとしても、うまく周知がされていなければ、ルールとして以前からあったとしても、どこかガッカリされてしまうこともあるでしょう。

自然災害に関する欠勤・遅刻早退控除については、労働者にも責任がないことから、労働者のモチベーションコントロールといった点を重視し、通常の欠勤・遅刻早退控除とは別の対応をとることも対応の一つかもしれません。

法律の通り控除するにしても、あらかじめ、確実に周知するよう徹底することが望ましいと言えます。

まとめ

SNS上では、自然災害時の会社の対応で、自社はホワイトだ、ブラックだ、と発信をしているユーザーをよく目にします。

緊急時の対応については、あらかじめ、ルール作りを周知を徹底するよう備えておきましょう。