退職する社員に「退職後の健康保険」について聞かれたら!?円満退職のための人事の対応

退職する従業員の手続きのひとつとして、健康保険の資格喪失手続きがあります。

そんな健康保険の喪失手続きをする中で、次の職が決まっていない退職する従業員から、「退職した後の健康保険はどうなるのか?」といった質問をされたことはないでしょうか?

基本的には退職後まで会社が面倒を見る必要はないので、「自分で調べてくれ」と突っぱねてしまってもいいのですが、退職後にトラブルにならないためにも、できるだけ円満に退職できるよう協力をしてあげたいものです。

今回は、会社側は知らないことも多い、協会けんぽ加入会社における、退職後の健康保険の手続きについて解説します。

社労士5000

(1)家族の扶養に入る

家族が会社勤めをしていれば、その家族の扶養に入ることができる場合があります。

家族の扶養に入ることができれば、保険料の支払いをする必要がなくなります。

「扶養に入る」と言うと、専業主婦やこどもなどに対して行うものとイメージする方も多い様ですが、男性でも、成人していても当然利用できます。

未婚の方などは、両親のどちらが会社勤めで健康保険に加入していれば、実家に帰り親の扶養に入るという事も考えられます。

既婚者で、共働きなのであれば、奥さんの扶養に入ることも、要件を満たせばもちろん可能です。手続きは、家族勤めている会社経由で行います。

ただし、扶養に入るためには、今後の年収見込みが130万円未満(60歳以上は180万円未満)であることが必要になります。

ここで言う年収とは、「所得」ではなく「収入」であり、営業収入や老齢年金や個人年金などをはじめ、非課税所得である遺族年金や障害年金のほか、雇用保険の給付もここに含まれてしまうので、収入の計算には注意が必要です。

(2)期間限定で今までの会社の保険を継続する

協会けんぽには、「任意継続」という制度があります。

読んで字のごとく、退職前の保険資格について、任意で継続をすることができます。ただし、任意継続をするためには、次の条件を満たす必要があります。

  • 資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること
  • 資格喪失日から「20日以内に申請」すること

保険料は、原則として今まで給与から天引きされていた額のになります。

これは、これまで会社が半分負担してくれていた分を自分で払うということになるからです。

ただし、計算のベースとなる標準報酬月額が28万円を超えていた人については、28万円で計算されます。給与が高かった人は、今までとそう変わらないということもあります。

手続きは、退職後20日以内にこれまで加入していた健康保険の保険者(協会けんぽや健康保険組合)に任意継続したい旨の申し出を従業員自身で行います。

任意継続の期間は2年間継続します。

再就職で社会保険に加入する場合などを除いて任意にやめることはできないことになっていますが、1日でも保険料の支払いを滞納すると、その時点で失効となってしまいます。

2年たったら任意継続は終了し、その後は通常、次に記載する「国民健康保険」に加入することになります。

20日以内の制限はかなり厳格で、「知らなかった」などの理由では認められません。そのため、任意継続をする場合には、必ず期限内に申出をする必要があります。

(3)国民健康保険に加入する

国民健康保険は、協会けんぽや健康保険組合に加入してない人は誰でも加入できる保険制度です。

扶養に入らない場合や任意継続をしない場合には、原則、国民健康保険に加入することになります。

加入の手続きは、各市区町村で行われます。

原則として、国民健康保険に加入することになる人は、前の健康保険の資格が喪失したときから原則14日以内に届出をする必要があります。

保険料は、市区町村によって若干異なりますが、前年所得で計算された所得割額に、世帯でいくらの平等割、一人当たりいくらの均等割、資産の額に応じた資産割などが加算されて算出されます。

限度額がありますので、前年所得が高い人でも、それに比例した高額の保険料を取られるということはありません。また、リストラなどにより失業を余儀なくされた人などについては軽減がある場合もあります。

地域によって手続きが異なることがあるので、市区町村ごとに確認をする必要があるでしょう。

まとめ

退職後の健康保険手続きとしては、これらの3つがほとんどです。

会社側としては、退職後についてまで何かしてやる必要があるのか、と思うこともあるかもしれませんが、退職をする従業員は何をするか分かりません。

人事担当者や経営者は、こういった案内ができると、最後の最後で揉め事を起こされず、円満に退職してもらうことにつながるのです。