人件費削減も?IT事業に向いている「フレックスタイム制」の基本と導入時の注意点とは!?

近年、特にIT企業における「フレックスタイム制」の導入が増えてきています。

労働時間に関する制度は、一部の大企業のみで行われているようなイメージですが、最近では中小・ベンチャー・スタートアップ企業でも導入を進めている企業も多く、どういったものなのか気になる、といった経営者や人事労務担当者から問い合わせが増加しています。

比較的、手軽に導入できる「フレックスタイム制」は、どういったもので、会社にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

社労士5000

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制は、「一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間」の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

労働者は仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことができます。

「一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間」を清算期間といい、3ヶ月以内の期間で定めます。

フレックスタイム制のメリット

フレックスタイム制の最大のメリットは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することが出来ます。

労働者にとっては、日々の都合に合わせて、時間という限られた資源をプライベートと仕事に自由に配分することができるため、プライベートと仕事とのバランスがとりやすくなります。

また、フレックスタイム制の導入によって、労働時間を効率的に配分することが可能となり、労働生産性の向上が期待できます。

さらに、仕事と生活の調和を図りやすい職場となることによって、労働者の職場定着率の向上や、清算期間内に繁忙時期と閑散時期がある場合には、それぞれの時期の労働時間の合計で賃金計算をするため、時間外労働を均すことができ、残業代の削減につながるなるなど、使用者にとってもメリットがあるのです。

導入時の会社側の注意点

フレックスタイム制の導入に際し、会社側は次のような事に気を付けなければなりません。

(1)就業規則等への規定と労使協定の締結

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める必要があります。

さらに、労使協定で以下の事項を定める必要があります。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 清算期間
  • 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  • 標準となる1日の労働時間
  • コアタイム(※任意)
  • フレキシブルタイム(※任意)

この2点を満たしていれば、フレックスタイム制を導入することができます。

(2)時間外労働に関する取り扱いが通常とは異なる

フレックスタイム制を導入した場合には、労働者が日々の労働時間を自ら決定することとなります。

そのため、1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えて労働しても、直ちにに時間外労働とはなりません。

逆に、1日の標準の労働時間に達しない時間も、直ちに欠勤となるわけではありません。

フレックスタイム制を導入した場合には、清算期間における実際の労働時間のうち、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働となります。

つまり、フレックスタイム制でも割増賃金の支払いの必要があるという事です。法手労働時間の総枠(上限)とは、次のように決まっています。

一カ月の法定労働時間総枠(暦日数)

  • 31日:177.1時間
  • 30日:171.4時間
  • 29日:165.7時間
  • 28日:160.0時間

清算期間における総労働時間は、この上限の範囲内としなければなりません。

なお、時間外労働を行わせるためには、36協定の締結が必要です。

(3)清算期間における総労働時間と実労働時間との過不足に応じた賃金の支払いが必要

フレックスタイム制を採用した場合には、清算期間における総労働時間と実際の労働時間との過不足に応じて、以下のように賃金の清算を行う必要があります。

あらかじめ定めた総労働時間より多かった場合

超過した時間分の賃金清算が必要通常の残業と同様の処理

例:1か月の総労働時間を160時間と設定し、実際に働いた時間が180時間であった場合
→20時間が時間外労働として、法定内および法定外残業代を支払わなければならない。
(暦日が31日の月であれば、177.1時間を超えた分は法定外残業として、160時間以降177.1時間未満は法定内残業として残業代を支払う必要がある)

あらかじめ定めた総労働時間より少なかった場合

  • 不足時間分の賃金を控除して支払
  • 不足時間を繰り越して、次の清算期間の総労働時間に合算
    例:1か月の総労働時間を160時間と設定し、実際に働いた時間が150時間であった場合
    →10時間分の賃金を控除する(①)か、10時間分を次の清算期間の労働時間から控除する。

まとめ

フレックスタイム制は始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる制度ですが、使用者が労働時間の管理をまったくしなくてもよいわけではありません。

労働時間が自由な代わりに、賃金も固定!という訳ではないので、ご注意ください。