職場の飲み会は残業?業務外の行為はどこまでが労働時間なのか?【2022年9月加筆】

昨今、労働時間の考え方については、非常にシビアな線引きが求められます。

今までの慣習で、「労働時間のはずがない」と思っていたことでも、今どきの考え方からすると労働時間と考えられることも少なくありません。

その代表格が、職場の飲み会です。

飲み会が「労働時間か否か」といった議題に上がること自体、考えたこともない方も多くいらっしゃるかと思います。

しかし、今の世の中、国家を挙げて労働時間の是正を求めている以上、こういったグレーな部分をどう考えるかは、経営者や人事労務担当者は知っていなければなりません。

今まで労働時間と考えていなかった部分が労働時間と判断された場合、かなりの額を未払い賃金として請求されてしまう可能性もあります。

今回は、労働時間の線引きについて、解説していきます。

社労士5000

職場の飲み会は労働時間(残業)になるのか?

「業務をするわけではないのだから、労働時間とはいわないのでは?」と、考える方が多くいらっしゃるかと思いますが、結論からいうと、飲み会でも労働時間とされることもあり得ます。

ポイントは、強制であるか否かです。

原則としては、飲み会は労働時間としては認められません。

しかし、その飲み会の参加が強制されている場合には、労働時間として認められる可能性があります。

表面上は強制とはされていなかったとしても、参加しないことで社内の評価が下がる場合や、当人が参加しないと運営や進行ができないなどといった場合には、事実上、参加が強制されていたとされ、労働時間として認められる可能性があるのです。

これは、飲み会だけに限った話ではなく、ゴルフのコンペやバーベキュー大会、運動会や社員旅行など社内イベント全般に当てはまる考え方になります。

接待などであれば、基本的には労働時間と判断されます。

社内イベント以外の場合の労働時間の判断基準は?

イベントごとなど、あきらかに業務ではない場合については、上記のようになりますが、業務に関連性のある行為については、勤務時間外に実施された場合には、どう判断されるのでしょうか?

(1)朝の掃除

当番制などにより、強制として行われるのであれば、労働時間に当たります。

参加が自由なボランティア活動のようなものであれば、基本的に労働時間とは判断されません。

(2)朝や帰りなどの着替え時間

会社の指定する制服や作業服などの着用を義務付けている場合には、着替え時間も労働時間と判断される場合があります。

(3)休憩時間の電話番や来客番

お昼ご飯を取りながらも、電話や来客があった際には、対応しなければならないとしている場合には、労働時間と判断されることがあります。

(4)研修や教育訓練

会社側が受講や参加を強制している場合には、労働時間と判断されます。

業務に必要なスキルを学ぶためと思って外部研修などを受講したとしても、それが労働者の判断で行われた場合には、労働時間とはなりません。

(5)健康診断の受診時間

一般的な労働者については、1年以内ごとに1回の健康診断の受診が義務付けられていますが、一般健康診断の受診の時間は、労働時間には含まれません。

そのため、受診の時間については、勤務時間内であれば無給とすることもできますし、勤務時間外に受診した場合には、労働時間とは判断されません。

(6)出張のための移動時間

原則としては、労働時間とは判断されませんが、移動時間中も仕事をしていたり、物品の輸送などといった場合には、労働時間とは判断されるます。

移動時間中の全てを労働時間としない場合、長距離の出張の際には所定労働時間をみたいさないこともあるため、出張をした日に関しては、「所定労働時間を働いたものとみなす」といった運用をすることが多くあります。

まとめ

今まで労働時間としていなかった部分も、正確にいえば労働時間とされることになります。

こういった部分を適正に行わないと、未払い賃金請求の対象にもなってしまう可能性が高まります。

ちょっとした時間でも、未払い賃金請求として過去2年分を請求されれば、かなりの額になることもあります。

これを機に、自社がどういった慣習となっているのかをよく確認し、適切な運用を行いましょう。