【労働時間と法律】お昼休憩に電話番の指示はあり?労働時間30分未満の切り下げはあり?【2021年11月加筆】

社労士5000

デスクでお昼休憩 電話番の指示はあり?

デスクで電話番をしている従業員に対して、「電話がかかってきたら、出ておいて」と指示するのは、可能なのでしょうか。

「電話がかかってきたら、出ておいて」と指示してしまうと、労働時間になってしまうのでしょうか。

法律上の「労働時間」とは

労働時間とは、休憩時間を除いた実労働時間を指します。しかし、法律上、明確な「労働時間」の定義はされていません。

裁判例などから、現在は、一般的に「労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間」とされています。

イメージとしては、会社から何かしらの指示がある場合には、全て労働時間になるのです。

有名な判例として、三菱重工長崎造船所事件というのがあります。

これは、三菱重工長崎造船所の従業員は、始業前に保護具や工具の装着を含めた更衣を済ませて、体操を行う場所にいることをはじめ、副資材や消耗品の受け渡しを行うことや粉じん防止の散水などが義務付けられていました。

従業員はこれらの時間も労働時間であるとして、割増賃金の支払いを求めて提訴し、裁判所はこれらの時間を労働時間だと判断したのです。

この判決が1つの基準になって、「労働時間とは、使用者の指揮命令の下に置かれている時間」と定められたのです。

例えば、「昼休みの電話番」はもちろん、「暗黙の空気でやらなければならない残業」「指示をされて参加した休日の研修や社員旅行」「制服や作業着の更衣時間」などに費やされた時間は全て労働時間になるのです。

逆に労働時間に該当しないものとしては、通勤時間があります。

出張の直行・直帰の移動時間も労働時間ではありません。ただし、この移動中に何かしらの業務を行うように指示された場合には、それも労働時間になります。

労働時間の30分未満切り捨てはOK?

自社では、タイムカードをつけてもらっているが、30分未満は、切り捨てとしたいといった相談を受けます。

しかし、労働時間は1分単位で算定しなければならないとされており、例えば、日々の労働時間を15分や30分単位で切り捨てるのは違法です。

そもそも、従業員の給料はは全額払いの必要があるので、会社が勝手に労働時間を切り捨てて、給与を少なく支払うのは、違法になるのです。

ただし、例外として、1ヵ月分を合計した際に1時間未満の端数がある場合には、30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げることは認められています

賃金支払いの5原則

賃金とは、働いた見返りとして支払うものです。基本給だけでなく、残業代、通勤手当なども賃金に含まれます。

賃金の支払いは法律上定められていて、賃金支払5原則とも言われています。

5原則とは、賃金を、1:通貨で、2:直接、3:全額、4:毎月1回以上、5:一定の期日で支払わなければならないという決まりです。

賃金は通貨で支払わなければならないため、現物支給は禁止されています(通貨払い)。ただし、労働者の同意があれば、銀行振り込みとすることも可能です。

そして、賃金は直接、労働者に支払われなければならないものであり、労働者本人以外に支払うことはできません(直接払い)。

しかし、労働者本人が病気などで受け取れない場合は、家族など代わりの人に支払うことはできます。

また、賃金はその全額を支払わなければなりません(全額払い)。

ただし、所得税や社会保険料など、法令に定めがあるものや、社宅・寮費や積立金を控除することをあらかじめ労使協定で取り決めている場合は、控除することができます

加えて、賃金は毎月少なくともI回は支払わなくてはなりません(毎月1回以上)。たとえ年俸制であっても、必ず月にI回以上は支払う必要があります。

さらに、「毎月20日」のように、期日を特定して賃金を支払わなければなりません(一定の期日)。