「退職代行業者」に対して会社がとるべき対応とは!?【2020年10月加筆】

退職代行」を行う事業者がいるのはご存知でしょうか。

ここ数年話題となっていますが、退職代行業者とはいったいどういったものなのでしょうか。

また、会社にとってどのような影響があり、どのような対応をとるべきなのでしょうか。

社労士5000

退職代行業者とは

退職代行業者とは、退職に必要な手続きなどを社員に代わって行うサービスを提供する事業者のことを指します。

依頼者は、会社を退職したいが「上司に言いづらい」「退職を認めてくれない」などの理由で辞めることが出来ない場合などに依頼する様です。

退職代行業者が出来ること、出来ないこと

退職代行業者は、基本的なサービスとして、従業員に代わり退職の意思表示や退職に関する手続きの補助のみを行います。

補助とは、主に本人への伝達等を指します。

反対に、未払い残業代の請求や有給休暇の買い取り請求などの「交渉」行為は、原則できません。

各種請求などによる「交渉」を代理する行為は、法律上、原則として弁護士(140万円以下の交渉等の場合は認定司法書士も含む)しか出来ません。

そのため、弁護士や認定司法書士などでない退職代行業者がこれらの交渉や訴訟の代理をした場合は、弁護士法違反となります。

退職代行は違法ではないのか

自社のホームページを持っていたり、大々的に広告をしているような退職代行事業者は、自分たちをの行為は退職の申出などの伝達等を代行する「使者」であり、交渉などをする「代理人」ではないという立ち位置にいるようです。

弁護士などしか出来ない「交渉」などはせずに、退職の意思表示などを「伝達」するに留まるのであれば、弁護士などが介入していなくてもサービスとして行うことができます。

正しく線引きができていれば、必ずしも違法な業者とは言えないということです。

退職代行業者から連絡が来たら

退職代行業者はまず、「○日から有給消化とし退職したい」「退職届や入館証は郵送する」「連絡や書面は業者を通じてほしい」など、「本人からの要望」を本人に代わり伝達してきます。

これに対し、会社としてはどの様に対処するべきなのでしょうか。

1)契約関係があるかを確認する

まずは自社社員と退職代行業者間に、契約関係が本当に存在するのかを確認しなければなりません。そのために、委任状契約書などを確認する必要があります。

契約関係の確認をしないまま、社員の退職処理を進めてしまった場合、後に「相談はいたが依頼をしたつもりはなかった」などと言われた場合に、会社側に落ち度があると判断されてしまう可能性があります。

本人に直接確認できれば良いですが、このような業者を利用する状態の社員本人とは連絡がつかない可能性が高いため、事業者側に必要な契約関係の証拠の提出を請求しましょう。

2)契約関係が確認できた場合

契約関係が確認できた際には、退職代行業者を窓口として実際に退職の処理を進めていくかを検討することになります。

「退職代行業者を窓口として退職手続きを行わなければならない」という規則はないので、退職代行業者を通じずに、社員本人に連絡を取って退職手続きを進めることも可能ではあります。

3)契約関係が確認できなかった場合

契約関係が確認できなかった場合、退職代行業者を窓口として退職手続きを進めるには注意をしなければなりません。

この業者を窓口にして大丈夫なのかを、社員本人に直接確認する、若しくは、対応して問題ないかの連絡を本人から一度するように退職代行業者に伝えるなどの防衛策をとらなければなりません。

本人からの連絡がもらえない場合には、同意書などの書面の活用も考えられます。

弁護士による退職代行

退職代行業者の多くは、交渉の必要がある場面では顧問弁護士が対応するといった形をとっています。

しかし中には、弁護士自身が退職代行を行っているケースもあります。この場合、もちろん退職代行者がする退職の意思表示や退職に関する手続きの補助も、未払い残業代の請求などの交渉も可能となります。

「退職代行には対応しない」という選択も可能ですが、訴訟などの法的手続きをされる可能性もありますので注意しなければなりません。

まとめ

今までなかった新たなサービスであることから、会社としては非常に困惑するかと思います。

しかし、社員本人としてもこのような業者を利用せざるを得ない精神状態であることが考えられるため、本人と直接連絡を取ることは難しいでしょう。

本人と連絡が取れないことによって、備品などの貸与物が返却されないことはセキュリティー面で大きな問題となることも考えられます。

いろいろと思うことはあることでしょうが、退職代行業者を窓口に退職を進めるということは、必ずしもマイナスなことでもないのかもしれません。