従業員からの未払残業代(未払賃金)の請求を無視し続けたらどうなってしまうのか?

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近年、会社に対する未払残業代(未払賃金)請求が、爆発的に増えました。

その背景には、国の働き方改革などの政策にともない、労働者が自己の権利を主張する機会が増えてきたという事や、それをサポートする弁護士が増えたなどといった要因もあります。

弁護士業界においては、過払い金に次ぐある種のブームのような扱いがされているような状態です。

未払残業代請求においては、そのブームのような勢いの中で、本来であれば認められないような過度な請求をしてくる者も少なくありません。

企業としては、払う必要があるものとそうでないものを見極める必要もあるのです。

そんな中で、企業が従業員や元従業員から未払残業代請求をされて場合には、故意(わざと)や過失(間違い)により、その請求を無視してしまった場合、どうなってしまうのかを解説したいと思います。

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内容証明郵便などによる通知を無視した場合

未払残業代請求の多くは、まず、書面やメールなどの記録が残る方法により、以下のような通知を出します。

  • いつの分で、(○年●月から△年▲月分など)
  • どういった内容の金額で、(法定労働時間、時間外労働、休日労働、割増賃金など)
  • 合計いくらを
  • いつまでに支払ってください

書面等の通知による段階で、故意(わざと)や過失(間違い)により、その請求を無視してしまった場合、次のようなリスクが考えらます。

(1)労働基準監督署に通報される

未払いが労働基準法に違反しているとして、監督署に通報される可能性があります。

この場合、監督署から会社に対して調査が行われ、未払い部分の支払いを勧告される可能性があります。

(2)「支払督促」を申立てられる

法的手続きの一種で、裁判所が行う督促です。

申立てに対して異議を申立てれば、通常の訴訟に自動的に移行し、請求について争うことになります。

(3)「労働審判」を申立てられる

法的手続きの一つで、通常の裁判と同様に証拠を提出し、労働審判委員会が審判を下す制度です。

訴訟に比べ、かなり短い期間で解決を図る制度で、長くても3か月以内で終わります。

労働審判となった場合には、反論書面の提出や裁判所への出頭などの手間がかかります。

複雑な法律問題に発展する可能性も高いため、弁護士に依頼するなどの必要が出てきてしまい、打合せや書類取集などの時間的、手間的な面やコストの面を検討する必要が出てきます。

審判が下れば、強制執行(差押え)をする権限を与えてしまう可能性があります。

(4)「訴訟」を申立てられる

言わずと知れた法的手続きのひとつで、書面の作成や提出、裁判所への出頭などが必要となります。

労働審判と違い、かなりの時間を要することが予想されます。一般的には半年から1年は覚悟しておく必要はあるでしょう。

相手方には弁護士がついていることが通常なので、こちらも弁護士を立てるのが一般的です。労働審判同様、時間、手間、費用といった事項が発生します。

敗訴の判決が出れば、強制執行(差押え)をする権限を与えてしまう可能性があります。

支払督促を無視してしまった場合

上記(2)の「支払督促」を無視してしまった場合、申立てた労働者側に、強制執行(差押え)をする権限を与えてしまう可能性があります。

労働審判を無視してしまった場合

労働審判申立書と期日呼出状が届いたにも関わらず、書面の提出や出頭を無視してしまった場合には、「欠席労働審判」が下される可能性があります。

「会社側は申立人(労働者)の請求額金○○円を支払え」といった審判となれば、本来であれば支払う必要のなかった金額についても、支払わなければならないことになります。

また、申立人に対し、強制執行(差押え)をする権限を与えられてしまいます。

訴訟を無視してしまった場合

訴訟の際には、訴状や証拠などの書面一式と期日呼出状が届き、期日までに反論書面の提出や期日に出頭することを求められます。

これを無視してしまった場合、「欠席判決」となり、原告(労働者)の主張が全面的に認められることになります。そうなれば、上記労働審判時同様、本来であれば支払う必要のなかったものまで、支払わなければなりません。

また、原告に対し、強制執行(差押え)をする権限を与えられてしまいます。

差押えされるとどうなるのか?

支払督促、労働審判、訴訟などの法的手続きを無視してしまった場合には、労働者側に対し、強制執行(差押え)をする権限を与えられてしまいます。

この権限を、労働者側が手続きに則り行使した場合には、いよいよ差押えをすることが出来てしまいます。

差押えの多くは、銀行口座の差押えです。口座が一時凍結され、強制的に請求金額を徴収されます。

銀行口座の差押え以外には、売掛金の差押え不動産の差押え動産の差押えなどを行われる可能性があります。

動産(車など)や不動産などは、差押えた対象物を競売にかけ、売れた費用から請求金額を徴収する仕組みのため、かなり手間がかかる手続きですが、もしやられた場合には、金銭以外の部分での被害が相当なものとなります。

まとめ

以上のとおり、未払残業代請求を無視すると、本来であれば支払う必要のなかったものまで、支払うこととなったり、差押えをされたり、ちゃんと対応していた場合以上に不利益を被ることになります。

未払残業代請求をされて際の進め方に不安がある場合には、弁護士や社労士などの専門家に相談することをお勧めします。