近年、世間一般の労働者の退職を代わりに行うことを生業とする、退職代行業者なるものが世間を騒がせています。
2019年のゴールデンウィークは、多い人で10連休と大型の連休となりますが、こういった連休の後は、退職代行の依頼が多くなるようです。
退職を代行するという業者がある事自体にまだ馴染みがない人が多いかと思いますが、実態としてどのようなことを行っているのでしょうか。
いつ利用されるのか?
退職代行を利用するタイミングとしては、自身が勤める勤務先を退職したいにもかかわらず、以下のような理由で、退職を言い出せない、退職を認められない、嫌がらせをされるといった職場環境で働く労働者が、退職を実現するために利用する様です。
- 退職届を受理してくれない
- 強引な引き留めにあう
- 「退職は許さない」「今退職したら損害賠償請求する」などと脅される
- 退職の相談をしたら、嫌がらせにあった
- 会社全体が、退職すると言える空気でない
退職代行は、どんなサービスなのか?
具体的に、退職代行業者は何をするのかと言うと、退職希望の労働者に代わって、勤務先に対し「退職の意思表示」をします。
意思表示とは、業者によって異なりますが、電話、メール、書面の郵送などの方法により、退職代行業者から勤務先に「○○さんは退職をするので、手続きをして下さい。」と言った通知をすることが一般的です。
これに合わせて、保険証やpcなどの貸与物、その他必要書類のやり取りなどを、退職希望者本人ではなく、退職代行業者を通じて行うよう依頼されることが多い様です。
退職希望者本人としては、嫌な思いや気まずい思いをしなくて済むといったメリットや、よく分からない手続きをある程度代わって行ってくれるといったメリットがあります。
どのくらいの料金で行われるものなのか
一般的なサービス内容のものでは、相場として5万円~10万円前後が多い様です。
パートアルバイトだと3万円で、正社員だと5万円などといったプランを設けている業者もあります。
また、紛争となった際、一部手続きを弁護士が代行するようなプランを設けている業者もある様です。
法律には違反していないのか?
退職代行業者から従業員の退職の意思表示をされる会社側としては、こういった業者が法律上正当なものなのかという部分が気になるところかと思います。
この退職代行業者が合法か否かについては、今現在どちらとも言えない状態とされています。
このような曖昧な状況となっている理由は、退職代行業者が行うサービスの内容によって変わってくるからです。
退職代行業者のサービスとして、退職の意向を伝えるだけであれば、違法となる可能性は低いですが、退職手続きを代理したり、退職金などの交渉などもサービスとして行われる場合には、違法になる可能性があります。
報酬を貰い、退職手続きの代理や退職金などの交渉をすることは、「法律事務」行為に当たり、「法律事務」は弁護士しか行ってはならないと弁護士法により定められています。
そのため、弁護士ではない退職代行業者が、退職に関する代理や交渉などの「法律事務」を行うことは、違法なサービスの提供にあたるのです。
だた、最近では弁護士による退職代行サービスも増えてきており、その場合には退職に関する代理や交渉なども可能となり、会社側も対応しなければならないこともありますので、注意が必要です。
会社側としては、自社に連絡してきた退職代行業者が、弁護士資格がある業者なのか否を確かめなければなりません。
会社側にとって困ることとは
このような退職代行業者を自社の従業員に利用されると、やはり会社側にとってどういったデメリットや不都合などが出てくることが多くあります。
例えば、以下のような場合に、第三者を経由する分、デメリットや不都合などはどうしても発生してしまいます。
- 会社が必要としている退職の手続きができない
- 必要な書類を回収できない
- 備品などを返してもらえるか不明確
- サービスが違法であると考えられる場合、法的手続きも検討しなければならない
- 業者自体は、書類作成などはできないため、逆に時間がかかる
ただ、突然来なくなってしまって、書類や備品など、何も回収できないとなってしまうという選択肢を取られるよりかは、いくらかマシである考える会社もあるようです。
退職代行業者を使われるということは・・・
従業員からしてみれば、お金もかかるし、利用する業者によっては余計なトラブルなどが発生する可能性があるなど、通常の退職ではないリスクが伴います。
しかし、それでも退職代行業者を利用するということは、自社がそれだけ「退職しづらい」会社であると考えることもできます。
退職は労働者の権利であり、その権利を侵害しているような状況なのであれば、行政からの是正指導などを行われる切っ掛けともなってしまいます。
もし、退職代行業者を利用した退職が発生した場合には、退職代行業者への対応なども考えなければなりませんが、そもそも、退職代行業者を利用されてしまった原因も考える必要があるのかもしれません。