労働審判の増加!?経営者や労務担当者が知っておくべき労働審判制度とは?

近年、未払い残業代や解雇、ハラスメントなどの労働問題の解決方法として、労働審判という制度を利用されることが増えてきています。

経営者・労務担当者としては、労働審判とは何なのか、正しく知っておく必要があります。

社労士5000

労働審判とは?

労働審判とは、簡単に言ってしまうと、労働問題を短期間で解決するための法的手段の一つです。裁判官ではなく労働審判委員会が、紛争の解決を図る手続を行います。

労働審判は、3回以内の期日で、申立から終了するまでの期間が平均70日前後と迅速な解決が図れる制度で、裁判に比べ手続きが簡単であることから、労働者側にとって使いやすい制度として近年利用が増えてきています。

労働者側は、じっくりと事案を検討し、方針や証拠が固まってから申立をすることになりますが、会社側にとっては、いきなり申立書が届き、そこから対策、準備をしなければならないことから、訴訟よりもハードなスケジュールになることが多くあります。

短い時間を無駄にしないためにも、経営者や担当者は、労働審判について概要でも知っておく必要があります。

労働審判のどういった流れで進むのか

1)申立

労働者側が裁判所に、申立書と証拠書類を提出し、労働審判を申立てます。

裁判所は、申立てが不適法であると認めるときは、決定で申立てを却下されることがあります。

2)呼出・準備

申立が正式に認められ他場合、会社側に対し、労働者側が提出した労働審判申立書証拠書類が送られます。併せて、第1回目の期日が指定されます。

第1回期日は、原則として申立日から40日以内に指定されます。

会社側としては、1か月弱の内に申立側の主張の内容や事実の確認をし、答弁書の作成や証拠書類の準備をしなければなりません。

もし、弁護士を付ける場合には、その検討や依頼などにも時間がとられるため、非常にタイトなスケジュールとなります。

3)答弁書の作成・提出

第1回期日の1週間程度前までに、答弁書証拠書類を裁判所に提出します。

労働審判では、通常裁判と違い、原則として一度しか書類の提出を行わないため、1回目の期日で全てを出し切る必要があります。

1か月弱の期間で、答弁書の作成と証拠書類の準備を行わなければならないため、迅速かつ効率よく進めていかなければなりません。

未払い残業代請求などの場合、過去数年分の勤怠データなどを確認しなければならないこともあるため、かなりスピード感を持って対応する必要があります。

4)審理

審理は、原則3回以内とされています。

答弁書等の提出後、あらかじめ指定されていた第1回目の期日が行われます。第1回目は、双方から提出された書面や証拠をもとに、争点などの整理が行われます。

迅速な解決を図るため、1回目期日から労働審判委員会より調停(話し合いによる解決)による解決が持ち掛けられることも多くあります。調停が成立すれば、審判までいかずに終了です。

第2回目は、1回目で調停成立とならなければ、約1か月後を目途に行われます。1回目での検討課題を検討します。1回目同様、調停による解決ができないか打診をされます。

3回目は、最後の検討する機会です。ここでも調停による解決が不可能であれば、労働審判委員会による審判が下されることになります。

5)審判

審理の内容に応じた解決案を提示します。裁判で言うところの判決のイメージです。この審判に異議がなければ、審判は確定します。

確定した労働審判は、裁判上の和解と同じ効力があり、強制執行などを申し立てることもできます。

反対に、審判に異議がある場合には、2週間以内に異議申立ての手続きを行うことで、通常の訴訟に移行し、白黒つけることになります。

労働審判自体は、これで終了となります。

調停の打診

審理の際に、調停による解決を打診されます。

これは、審判まで持っていかずに、期日内において当事者双方による話し合いより解決させるものです。要するに、お互い譲歩することで、早く解決しましょう!という提案です。

必ずしも提案に乗らなければならないわけではありません。審判や訴訟に移行した際に、勝てる見込みがあるのであれば、断っても良いかもしれません。

審判に不服がある場合にする異議申立て

労働審判委員会により下された労働審判に対し、不服がある場合には、異議を申立てることが出来ます。

異議を申立てると、言い渡された労働審判の効力は失われ、強制的に通常訴訟に移行することになります。

通常訴訟に移行することで、さらに解決まで時間を要することが懸念されますが、労働審判の審理において双方の主張は既に行っているため、一般的な訴訟よりも早く進行します。

欠席した場合や期日に行けない場合

労働審判の手続きにおいて、申立てられた側(通常会社側)が期日当日に欠席をした場合には、「欠席労働審判」が出されることがあります。

通常裁判における欠席判決と同様、一方が反論等の主張をしないまま審判が下されますので、不当な審判となることもありえます。会社側としては、絶対に無視しないようにする必要があります。

もし、事情により出席できない場合には、早めに担当の裁判所宛に連絡をしましょう。場合によっては、2回目の出席により、1回目の欠席は認められることなどもあります。

まとめ

労働審判は、手続きが簡易で費用も抑えられることから、今後も利用が増加することが見込まれます。

経営者、労務担当者としては、労働審判に対する対策について、検討しておく必要があるでしょう。