従業員による着服や横領事件が発生した!会社や人事担当者がとるべき対応とは?【解説】【2022年4月加筆】

従業員が会社のお金を着服しているという案件があります。いわゆる横領です。

最初は、「金額が少なく気づかなかったが、だんだんと積み重なり、気がついたときには、結構な金額になっている…」ということも少なくありません。

従業員の横領に気がついたら、会社としては、どのように対応すれば良いのでしょうか。

社労士5000

横領にもいろいろある

横領というと、ニュースなどで見る大掛かりなものを想像しがちですが、会社の小口現金や経費の不正利用なども横領にあたります。

会社としてどう対応したいか

まずは、会社としてどう解決したいのか検討する必要があります。検討事項としては、次の事項などが考えられます。

  • 横領金額の返金
  • 損害賠償の請求
  • 社内における処分(懲戒、解雇等)
  • 刑事告訴

これらの対処は、会社の任意で行われるものなので、必ずしも行わなければならないものではありません。

事を荒立てたくないという思いが強ければ、社内における処分のみなどといったこともあるかもしれません。

そのため、自社ではどういった措置をするのかを考えておかなければならないのです。

大事なことは、証拠集め

従業員の横領への対処としては、証拠を集めることが非常に重要になります。

そのため、横領に気が付いたら、証拠隠滅を防ぐために、以下の対応を実施するのが望ましいといえます。

  • 面談をして、事実の確認をする。その際は、本人の署名捺印付きの調書をとる。
  • 横領の事実を認めた従業員に対しては、出勤停止命令を出す。
  • その他、証拠となりえるもの(メール、振込み履歴、その他)は、全て記録として残しておく。

以下の流れで進めるとよいでしょう。

  1. 事実確認のため面談をし、事実であれば調書の作成
  2. 調査、処分の検討のため、出勤停止命令
  3. 処分、対応の決定・実効

会社の対処策

1)横領されたお金を返してもらう

横領されたお金を返金してもらうには、その請求をする必要があります。

請求の際には、口頭のみでは行わず、必ず書面でも併せて行うようにしましょう。

場合によっては、使い込んでしまったなどとして返金を拒否してくる可能性もあります。その際は、後述する社内における処分や刑事告訴も視野に入れて対応する必要があります。

2)損害賠償を請求する

法律的には、従業員の違法行為に対して、損害賠償請求をすることができます。

しかし、どのような方法で損害賠償請求を行うのかが問題となります。

当然、裁判ということもできますが、裁判には、費用がかかる上、仮に裁判で勝っても、従業員側にお金がないと、回収できず結局費用だけかかってしまうということもあります。

まずは、口頭および書面による会社からの請求をし、対応されなければ、弁護士などから内容証明で請求することが一般的です。それでも対応されない場合には、裁判も検討する必要があるでしょう。

3)社内における処分

会社側としては、横領行為をした従業員は、何かしらの処分をする必要があると考えるでしょう。

処分をする際は、まず就業規則を確認し、横領が懲戒事由として規定されているかをチェックしましょう。

懲戒事由として規定されていない、そもそも懲戒の規定がないといった場合には、処分ができない戒能があります。懲戒事由にある場合には、何らかの処分が可能になります。

横領クラスの不祥事となると、解雇する会社が一般的ですが、懲戒解雇の場合、予告手当も必要なく即時解雇ができます。

解雇した場合で、就業規則がない、または、就業規則上に懲戒処分に関する記載がない場合は、法定の普通解雇となります。

普通解雇は、解雇予告して30日後解雇予告手当を支払うことで解雇することができます。

それでも、即時解雇を希望する場合は、労基署に事前もしくは事後に解雇予告除外認定を受ける必要があります。この認定は、横領程の事由の場合、比較的に認められやすいようです。

4)刑事告訴を行う

会社のお金を横領する行為は、刑法上の「業務上横領罪」にあたります。そのため、警察署にいって、刑事告訴することもできます。

ただ、この刑事告訴は、最終的に従業員が逮捕され、有罪になることはあっても、横領されたお金は返ってきませんので、注意が必要です。

刑事告訴をすると、刑事事件になるため、逮捕などをかなり大ごとになります。そのため、返金などを拒否していた場合にも、告訴を取り下げてもらうために、返金または返金の交渉に応じるということも多いくあります。

金額が大きい場合には、通常の返金や損害賠償請求と併せて、刑事告訴の準備も行い、いつでも刑事告訴の対応ができることをアピールすることが効果的と言える場合があります。

刑事告訴をする場合には、告訴状を作成して、警察署に行きます。その際には、従業員からお金を盗まれたことを証明する証拠も持参します。

警察も多数の事件を扱っているため、迅速に対応してもらうためにも、警察官からみて、事件の詳細と、どういう証拠が揃っているのかを分かりやすく伝える工夫が必要です。

まとめ

横領行為は立派な犯罪行為です。

ことを荒立てたくないといった考えも理解できますが、二度と同じような事件が起こらないためには、会社として厳しい処分を実施し、他の従業員にも事の重大さを知ってもらう必要があります。

会社として、どういった対応をするのか、事件が起こる前に検討しておく必要があるでしょう。