会社として従業員のSNSの利用を管理することはできるのか!?

現代社会におけるSNS(ソーシャルネットワークサービス)は、個人として利用するだけではなく、企業としても、広告効果の大きさなどから広く活用されるようになってきました。

広く普及し、個人、企業ともに利用される反面、SNSの利用によるトラブルも増えていることは言うまでもないでしょう。

特に企業側にとって、従業員が個人アカウントを使用し、自社のノウハウや情報を漏洩してしまう、または自社の評判を下げる発言等をしてしまうといったリスクも大いにあります。

企業はこのような問題を防ぐために、業務命令によって従業員個人のSNSアカウントの提出を義務付けるなどの管理を行うことはできるのでしょうか。そこにどのような法的問題が存在するのでしょうか。

社労士5000

業務命令とは!?

業務命令とは、労働契約や就業規則などに基づいて、業務の遂行のために従業員に対して行う指示や命令のことを指します。

会社は労働契約の締結により、業務命令権を取得し、基本的には正当な理由がない限り、業務命令を拒否することはできないとされています。

もちろん、労働契約にあるからと言ってどんな命令でも許されるのではなく、合理性のある命令でなくてはならないとされています。

合理性の範疇を超えてしまえば、パワハラやセクハラなどのハラスメントの事案などにもなりかねません。

業務命令としてSNSの管理はできるのか?

会社が個人のSNSアカウントを完全に管理するということは、従業員個人のSNSで企業についての投稿があったとしても、個人的な内容も含まれていることから、プライベートに会社が介入するということになります。

そのため、業務命令として従業員のSNSを全て管理しようとすることは、業務上の合理性が認められず、違法な業務命令と評価される恐れがあると考えられます。

SNSの管理ができないなら、対策はできるのか?

従業員個人SNSを会社が完全に管理することは、上述の通り難しいものであるといえますが、合理的な業務命令ならば当然行うことができます。

具体的には、業務命令によって、次のような規制を行うことを就業規則に記載することです。

  • 企業のノウハウや秘密を載せない
  • 企業の役員や従業員の個人情報を載せない
  • 企業イメージを低下させるような発言・写真を投稿しない

このとき重要なのが、抑止力・実効性を高めるために懲戒処分や、企業に損害を与えた場合の損害賠償規定も併せて設けておくことです。

さらに、どこまでの投稿が許されるかなどのガイドラインの設定や、従業員等に対し、入社時や都度、個人情報やネットリテラシーにかんする誓約書を書いてもらうなどの対策も効果的であると考えられます。

そして最も肝心なのが、規則等の整備や罰則の策定など、会社として徹底して取り組んでいる姿勢をしっかりと従業員にアピールし、周知することが重要となります。

まとめ

会社におけるSNSの利用について、わざわざ就業規則に記載し、業務命令とするなど大袈裟ではないかと感じる方もいらっしゃるかもしれません。みんな大人なんだからそのあたりはわきまえていると。

しかし、何気ない1枚の写真から、なんの関係もなさそうな一言からでも、分かる人からみればそれは十分な情報となります。ピースサインの写真から指紋を読み取られることがある世の中です。

SNSによって誰でも簡単に情報を発信できる現代社会においてネットリテラシーが高い集団であっても、ルールを策定し徹底することは、現代の企業にとっては必須であり、どんなに対策しても対策しすぎるということはないものであると考えられます。

企業の法務部や人事労務担当者は、個人のSNSによるリスクは本社従業員だけにかかわる問題でもないことを考慮し、社内コンプライアンスの問題として、従業員だけでなく、企業に関わるアルバイトや派遣社員、子会社の社員に対しても、定期的に説明会を開くなどし、周知を促したりする必要があると考えられます。