従業員の健康管理と一般健康診断
会社には、法律上、従業員の健康を管理する義務があるのをご存知でしょうか。
自分の健康管理は自己責任で行い、労働者自身で全て管理するものと考えている会社もあるかもしれません。
しかし、法律的には、従業員の健康管理は会社も行わなければならず、具体的に行わなければならない義務として一般健康診断(定期健康診断)の実施があります。
これは、もちろんベンチャー企業・スタートアップ企業など、まだまだ規模が小さくても同様に対応する必要があります。
健康診断は、従業員の健康管理の基本です。会社で一般健康診断を実施する際の基本的なポイントについて見ていきます。
一般健康診断の実施場所
会社の一般健康診断(以下「健診」)の実施方法としては、大きく分けて4つあります。
1)集団健診
医師や検診車などを呼んで、一斉に行うような健診です。数百人規模の会社が、部署ごとなどで行うことが多いです。
大企業や工場、学校や役所などが実施することが多い健診方法で、ある程度の従業員数がいなければ、通常行わないような大規模なものです。
2)会社指定の病院での健診
一番オーソドックスな方法で、会社が健診先の病院をあらかじめ指定し、一定期間内において、各自受診するといった健診方法です。
病院を指定する分、管理が楽になるというメリットがあります。
3)従業員が各自で健康診断を受診し、その結果を提出させる
受診先の病院に関しても、各従業員に任せる方法です。従業員数が多くない小規模の会社では、よく行われている方法です。
病院の指定などの手間は省けますが、一方、病院ごとに検査項目や結果のフォーマットが違ったりと、会社としての管理が煩雑になるというデメリットがあります。
会社の規模や管理体制によって、適切な手段をあらかじめ決めておくようにしましょう。
検診費用は誰が払う?
診断の費用は、会社側が全額負担しなければなりません。
ただし、上記の3で、従業員自身が決めた健診の際で、人間ドックなどの高額な健診を受診する、オプションの検査を行うなど、一般の検診以外に検診費用が発生することがあります。その際は、一般の健診費用に相当する部分のみを会社が負担し、差額を自己負担とすることができます。
ただ、後から揉めないためにも、あらかじめ会社負担の上限額を決めておく等ルールを明確にしておき、従業員に通知しておくことが望ましいです。
実施の頻度と時期
検診は1年以内ごとに1回行う必要がありますが、実施時期に決まりはなく、従業員ごとに実施時期が異なっていても問題はありません。
但し、ある程度固定の時期にしておく方が、会社側の管理が容易であるため、会社毎に決まった時期に実施するのが一般的です。
受診内容は自由?
最低限検査しなければならない項目は決まっていますが、省略できるものもあります。そのため、上記③の従業員自身が健診を決める際は、不足が出ないよう注意が必要です。
企業向けの一般健診プランがあるような病院も多くありますが、健診にも様々な種類があり、中には一般の健診として必要な検査項目が不足しているものもあります。
心配な場合は、法定の要件を満たしているのか病院に確認するのが良いでしょう。
受診時間の給与の扱いは?
会社側は受診時間中の賃金を支払わなければならないのでしょうか?
実は、健診中の賃金については、法律上、支払いの義務はありません。(※一般以外は支払う必要がある場合もあります。)
支払うかどうかは、あくまでも、労使間の取り決めによるものとなります。
ただ、法律上義務はないとしている一方、厚生労働省は受診に要した時間の賃金については、支払うのが望ましいとしています。
法律上の強制力はありませんが、賃金に関する部分については、不満を感じやすいところでもあることから、特段の理由がない限りは、労働時間として取り扱ったほうがよいのではないでしょうか。
一般検診受信は労働者にも義務がある!
会社は、従業員に対し一般健康診断を受けさせる義務がありますが、従業員にも、検診を受ける義務があります。
もし会社の指定病院での受診を拒否する場合、上記③の従業員自身が病院・健診を決める方法で受診する必要がありますが、従業員はその受診結果を会社に提出しなければなりません。
会社指定病院での受診を拒否する従業員には、結果の提出について必ず指示する必要があることを伝えましょう。
まとめ
「たかが健康診断」と思うかもしれませんが、健康診断で起きうる労働問題は少なからずあります。
会社として基本的な部分はしっかりと押さえ、早いうちにルールを明確化しておくことが、トラブル防止の上で重要となってくるのです。