これってパワハラ?パワーハラスメントの定義と会社側の対策とは

パワーハラスメント(以下、パワハラ)に関する行政への相談件数は、年々増加しています。

労働者側からすれば、社会的にも紛争上でも認められてきているのでありがたい話ですが、会社側からしてみれば、一従業員のパワハラ行為によって、会社側の責任まで問われるなどたまったものではありません。

従業員がパワハラ行為を行わないために、会社としてはどの様な対策をすべきでしょうか?

社労士5000

パワハラの定義と要件

厚生労働省は、パワハラ(パワーハラスメント)を、次のように定義しています。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

ここから、パワハラの要件となるポイントが3つあることがわかります。

  • 職場内での優位性
  • 業務の適正な範囲
  • 精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

(1)職場内での優位性

パワハラと聞くと、上司から部下に対する嫌がらせなどに対して使われがちですが、先輩後輩や同僚との間、場合によっては部下から上司に対して行われるパワハラもあります。

ここで言う「職場内での優越性」とは、職場における地位に限ったものではなく、単に人間関係や専門知識・経験の有無などにおける様々な優位性が含まれるものであると考えられています。

行為を行った者に、行為を受けた者に対し優越性があるか否かがポイントになります。

(2)業務の適正な範囲

社会通念に照らして、その行為が明らかに業務上必要性のない行為であったり、そのやり方や程度などの態様が相当であるか否かがポイントになります。

(3)精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

行為を受けた者が身体的・精神的に圧力により負担(苦痛)と感じることや、行為により職場環境が害されるものとなり、その結果、能力の発揮に重大な悪影響を及ぼすなど、就業上看過できない程度の支障が生じた行為であるか否かがポイントになります。

パワハラの基準は6つに分類される

厚生労働省は、パワハラの基準を、大きく6つの類型に分類しています。

(1)身体的な攻撃

殴打、足蹴り、平手打ちなどが一般的ですが、椅子や机を蹴るなどといった行為も、身体的な攻撃にあたることもあります。

(2)精神的な攻撃

人格否定や執拗な叱責、他の労働者の面前での叱責、恥ずかしい行為をさせる、必要以上の反省の強要などが、主に上げられます。

(3)人間関係からの切り離し

業務やチームから外す、長期にわたる別室や別席への隔離や自宅研修をさせることなどが主にありまあす。いわゆる「追い出し部屋」などはこれにあたります。

単に無視、挨拶をしないといった行為や、懇親会などに故意に誘わないなどといった行為もパワハラとされる可能性があります。

(4)過大な要求

指定した期日に絶対に間に合わない量の業務を指示したり、対象者の能力では対応できない内容の業務を指示しておきながら、一切教育等を行いなどといった行為は過大な要求といえます。

(5)過小な要求

仕事を与えない、業務に不要な行為の指示、通常アルバイト等が行う業務を正社員にさせるなどといった行為が過小な要求といえます。

(6)個の侵害

業務に関係のないプライバシーに関する過剰な侵害などが挙げられます。

人間関係を構築する上で、ある程度のプライバシーに関する質問などは出てくるとは思いますが、行き過ぎた行為となる場合には、パワハラと認定される可能性があります。

これらの類型はあくまでジャンル分に過ぎませんので、ここの類型に当てはまらないからと言って、「パワハラではない」ということにはならないので、注意が必要です。

パワハラが認定された時の会社の責任

パワハラ問題が発生すると、会社が一切加担していなくても、裁判によって会社側もその責任を問われる可能性があります。

会社側が問われる責任としては、次のようなものがあります。

(1)安全配慮義務違反による債務不履行責任

会社側が労働者に対して負っている安全配慮義務に違反すると認められる場合などに問われる可能性があります。

(2)権利の濫用等による不法行為責任

業務命令権や人事権などの範囲を逸脱・濫用であると認められる場合などに問われる可能性があります。

(3)使用者責任としての不法行為責任

会社が遂行する事業に関して、使用する労働者が第三者に損害を与えた場合などに問われる可能性があります。

これらが認められれば、治療費慰謝料などの支払いを命じられることがあります。

会社としてパワハラ対策に、どう取り組むべきか

会社のパワハラ対策の取り組みとしては次のような手続きが考えられます。

(1)社長や担当部署のトップからの通知

組織や担当部署のトップが、パワハラについて会社をあげて対策することを示す必要があります。

パワハラは、全ての労働者に関係するものです。会社が一丸となって対策に講じることを示すことが望ましいでしょう。

(2)社内ルールの策定

基本となるルールの策定が必要となります。一般的なものとしては就業規則です。パワハラについて、どう予防し、どう解決をするのか、明確にしておく必要があるでしょう。

就業規則以外にも、指針やガイドラインの作成なども良いかもしれません。

(3)実情の把握

労働者にアンケートやヒアリングなどを実施し、実情を把握する必要があります。

これらは定期的に実施することが望ましいでしょう。

(4)教育をする

パワハラの加害者とされやすい管理職などには、研修などを通じて、パワハラについての認識などを教育することが望ましいでしょう。

(5)周知

管理職だけではなく全ての労働者に、パワハラに関する社内ルールの公示や各種研修などを通じて、会社のパワハラへの対策を周知しましょう。

周知することにより、会社側がしっかりと取組みをしていることのアピールにもなります。

まとめ

パワハラ発生には、自身も同じようなことをされてきており、当時それはパワハラとはされていなかったので、パワハラという認識がなかったと言うものが多くあるようです。年齢によって、パワハラに対する認識が大きく変わることもあります。

社内でのルールを明確にし、研修などを通じてパワハラへの理解を深めることが重要になるでしょう。