企業がストレスチェックをするときの実施方法と注意点【2022年11月加筆】

社労士5000

ストレスチェックは従業員の健康管理の一つ

「うつ」などをはじめとした精神面での不調を未然に防ぐための取り組みの一環に、「ストレスチェック」というものがあります。

ストレスチェックとは、精神面の健康診断です。年に1回、労働者にストレスに関する質問票を記載してもらい、その結果を集計・分析し、労働者のストレスがどのような状況なのかを各労働者自身または会社として把握するための検査です。

現在は、常時雇用する労働者が50人以上の事業所には実施が義務付けられており、50人未満の事業所は努力義務とされています。

ストレスチェックも指導の対象になる!

ストレスチェックも厚生労働省の監督・指導の対象になります。

厚生労働省は、2017年度(平成29年度)に2万5676件の事業所に対する監督指導したことを公表しました。その中で注目したいのが、例年にはない新たな項目として「ストレスチェック等の実施義務違反」に関する指導状況のデータが含まれていたことです。

職場でのストレス等による精神障害やそれに伴う労災認定の増加する昨今、行政としても取り組みを強化していると考えられます。

ストレスチェック実施のポイント

検査結果や面談結果は重要な個人情報です。記録等の取扱いや保管については、適切に管理するように注意しましょう。

ストレスチェックの結果は本人の同意無しに会社が知ることは出来ません。

また、ストレスチェックを受けないことや、面談の申出をしたこと結果の開示に同意しないことなどを理由に、解雇や雇い止め、退職勧奨、降格や配置転換などを行うことは禁止されています。

上記の違反やストレスチェック自体の未実施、報告書の未提出については、労働局の是正指導の対象となり、場合によっては50万円以下の罰金に処される可能性があります。

ストレスチェックのフロー

次にストレスチェックを行う際のフローを誰が実施し、対応を行うのかという点も合わせて確認しましょう。大きく分けて4つのフローがあります。

1)事前準備

まず、会社として、ルールを明確にします。衛生委員会で主に次の項目などを検討します。

  • いつ、誰に対して実施するのか
  • 質問票の記載項目
  • ストレスが高い人の選定方法
  • ストレスチェックの結果保存先
  • 分析方法
  • 面接の必要性が発生した際の申出先や医師の選定

上記を、あらかじめ会社で決めておき、就業規則等に明文化しておきます。

2)実施

ストレスチェックの実施者は、会社ではありません。医師や保健師等、その他専門の委託業者が行うという点がポイントです。

ストレスチェックを自社内で実施する場合には、特に人事権を持つ者は、その記入内容・結果を閲覧しないようにするなど、一定の対策と配慮が必要となります。

ストレスチェックの実施後は、担当した実施者が、面談が必要な者の選定を行い、結果を実施者から本人に直接通知されます。

会社が結果を知りたい場合には、本人の同意が必要となります。ここは健康診断とは異なる部分です。

3)「医師による面談」が必要な労働者への措置

ストレスチェックの結果で「医師による面談」が必要と判断された労働者には、労働者から面談実施の申出があってから1か月以内に面談を行う必要があります。

さらに、面談実施後1か月以内に、医師から就業上の措置等の有無や内容について意見を聞き、その意見をもとに休職や労働時間の短縮など、必要な措置を実施する必要があります。

4)結果分析と職場環境改善への取り組み

実施者にストレスチェック結果について、部や課、グループなど一定集団ごとの集計・分析を行ってもらい、その結果をもとに、会社内でのストレスに関する分析や対策などを検討します。

一定の集団については、10人以上の集団とされており、10人未満の場合には、ストレスに関する分析や対策その集団の全労働者の同意が必要となります。

企業は当該集計・分析結果をもとに、職場環境が改善されるような取り組みを検討・実施しましょう。

ストレスチェックの結果の保存と報告

ストレスチェックや面談の結果等は、5年間保存しなければなりません。

また、50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回定期に、検査結果に関する報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

まとめ

ストレスチェックは50人未満の事業所に対しては努力義務とされていますが、50人未満の事業所も、積極的にストレスチェック制度を採り入れることで労働者のストレスを把握し、快適な職場環境を形成することが出来ます。

精神疾患による労働災害は、従業員の人数にかかわらず発生する可能性があります。

50人以上の会社で、未実施の場合は、すぐに対応をする必要がありますが、50人未満の会社でも、従業員の健康管理の一環として導入を検討するのも良いかもしれません。