懲戒処分の6つの種類と従業員の問題行動に対する5つの判断基準

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問題を起こした社員に対して、会社は「懲戒処分」を検討することがあります。

この懲戒処分には、法律による明確なルールが定められており、このルールに反して懲戒処分をしてしまった場合、従業員から訴えられるなど、会社側が被るリスクがあるのです。

懲戒処分をめぐり会社側が敗訴した例もあります。会社は懲戒処分を下す場合の法律的なルールについてどのような点を注意する必要があるのでしょうか。

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就業規則に「懲戒」の項目があるか

懲戒処分において、もっとも重要なのが、就業規則に「懲戒処分」の規定がされていることです。

大前提として、就業規則に懲戒処分に関することが記載されていなければ、会社は懲戒処分を下すことはできません。

また、判例では就業規則において「会社として、どのような行為をすると懲戒処分に当たるのか」を明確に示していなければならないとしています。

世間一般的に問題行動であるとされる行為があった場合でも、就業規則に規定されていない懲戒処分を下してしまうと、無効と判断されてしまいます。

懲戒処分を検討する際は、該当従業員の行為が懲戒処分の対象となるのかを就業規則と照らし合わせる必要があるのです。

重すぎる懲戒処分は無効になる場合も

懲戒処分の規定が就業規則に設けられている場合でも、その懲戒処分が、問題行動の内容と比較して重すぎる場合には、後に裁判などで争われた際に、懲戒処分自体が無効となることがあります。

そのため、企業としては「どのような問題行動がどのような懲戒処分に相当するのか」を慎重に判断しなければなりません。

懲戒処分の種類

懲戒処分の例としては、以下の6つが挙げられます。

1)戒告、けん責

労働者に反省を求め、労働者を将来に向けて戒めるといったもので、いわゆる「指導」にあたるものです。

戒告は口頭で、けん責は書面で反省を求めることが一般的です。

通常この処分は懲戒処分の中で最も軽い処分として定められており、企業によっては始末書顛末書の提出をさせる旨を定めている場合もあります。

2)減給

従業員の給与から、一定額を差し引く処分を言います。減給処分については、以下の2点について注意が必要です。

  • 減給処分1回の減給額が、平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。
  • 数件の懲戒事案について減給処分を科す場合、その総額が一賃金支払い期において現実に支払われる賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

3)出勤停止

従業員に対して一定期間の出勤を禁じるもので、出勤停止期間の給与は支給されず、勤続年数にも通算されないのが一般的です。

出勤停止の期間の上限は法律上設けられていませんが、実務的には、1週間から1か月が多いように思われます。

あまりに長期間の出勤停止は、裁判で無効になる可能性があるため注意が必要です。

4)降格

従業員の役職・職位等を、現状のものから下位のものに引き下げる処分です。

降格処分は役職給などがなくなってしまうため、従業員への影響は比較的大きいものになり、裁判沙汰になるケースが多くあります。

5)諭旨解雇

労働者に対し一定期間内に退職届の提出を勧告し、勧告に従い退職届が提出された場合は依願退職扱いとし、提出されない場合は懲戒解雇とする処分です。

諭旨解雇の場合にも、懲戒解雇と同様、退職金の一部または全部が支給されないことがあります。懲戒解雇としない分、温情的措置とも言えます。

6)懲戒解雇

問題行動を起こした従業員を解雇する処分です。

通常この場合には、退職金が支払われない上、解雇予告手当も支払われません。

問題行動に対する懲戒処分の判断ポイント

具体的に、どのような問題行動がどの懲戒処分に相当するか、その判断基準についてみていきましょう。

1)戒告・けん責に相当する行為:一番軽い処分

  • 1日程度の無断欠勤
  • 業務上のミスなど

これらのような行為があった場合で、一回目の懲戒処分を下す場合には、戒告処分やけん責処分にて対応することが一般的です。

2)減給に相当する行為

  • すでに戒告・訓戒などの処分をしているにも関わらず、さらに遅刻・欠勤・業務上のミスを繰り返している場合など

初めての問題行動ですぐに減給処分をするのは、重すぎる処分と判断されることが多くあります。

そのため、戒告、けん責等の処分を数回行ってから、それでも改善が見られない場合などに行うことが望ましいと言えます。

3)出勤停止に相当する行為

  • 職場内の暴力行為
  • 職務放棄など

出勤停止は、仕事をする機会を奪い、その期間中の給料の支払いという生活を営む上で大きな損失を与えます。そのため、重大な損害を会社に与える行為の場合に適用します。

4)降格に相当する行為

  • 重大な社内規則違反
  • セクハラ、パワハラなどのハラスメント行為など

降格は役職手当などがその後も継続的にカットされてしまうため、出勤停止よりも重大な違反行為者に対して行われる処分となります。

5)懲戒解雇、諭旨解雇に相当する行為:最も重い処分

  • 横領行為
  • 長期間の無断欠勤
  • 強制わいせつに該当するような重大なセクハラなど

諭旨解雇に関しては、懲戒解雇前の温情的な処分と言えます。諭旨解雇に相当する行為としては、懲戒解雇と同様という考えでよいでしょう。

懲戒解雇の場合は、クビになった上に退職金が支給されないなど従業員にとっての不利益が大きくなります。そのため懲戒解雇を下す場合は、事前の検討を十分にする必要があります。

懲戒解雇を合法とした判例

  • 領収証の改ざんをして、10万円の不正請求した事案
  • 「病気のため欠勤する」という連絡のみで、その後1ヶ月半に渡り欠勤した事例
  • 男性上司が女性部下2名に対し、飲食を共にした際に無理やりキスをしたり、深夜自宅付近まで押し掛けて自動車に乗せ車中で手を握ったり、残業中に胸をわしづかみにするなど事例

まとめ

問題行為に対して重すぎる懲戒処分は、裁判に持ち込まれ懲戒処分自体が違法とされてしまう可能性もあります。

懲戒処分を下す場合は、会社としてはどのような問題行為にどの懲戒処分が相当するのかを事前にしっかりと検討し、正しい運用をする必要があるのです。