半日単位の有給休暇
年次有給休暇は通常、日単位で取得することが一般的です。
しかし、労働者・使用者双方の同意があれば、日単位取得の阻害とならない範囲で半日単位の取得が可能となります。
労働基準法などの法律の規定に、この半日単位の有給取得制度(以下「半日有給制度」とする)は規定されているわけではないので、半日有給制度を導入することは企業の義務・努力義務はありません。
つまり、半日有給制度というのは、法律上の制度ではなく企業が任意で導入している制度ということになるのです。
半日有給制度の導入
半日有給制度の導入には、制度の詳細についてあらかじめ就業規則に定めておく必要があります。その際以下の2点に注意する必要があります。
- 有給休暇とは労働者の心身をリフレッシュするためのものであり、労働者の利益を損なわないルールを設ける必要があります。半日の有給を1日の有給として取り扱うなどということは許されません
- 半日の有給取得で0.5日の有給を消化したものとし、半日有給を2回の取得で1日の有給消化と取り扱う
半日有給の「半日」の定義とは
半日有給制度での問題点は、「半日をどこで区切るか」という点です。
そのため、トラブルにならないように、あらかじめ「半日」の定義や半日単位の区分を就業規則でしっかり定めておく必要があります。
「半日」のとらえ方についてですが、①午前・午後で区分と②所定労働時間を2で割るの2つの考え方があります。
1)午前・午後での区分
多くはこの区分方法が採用されています。しかしこの場合、時間的な不公平が生じます。
例)午前:9-12時、午後:13-18時とする場合
午前3時間・午後5時間となり、休む勤務時間に2時間の差が出てしまします。
しかし、この不公平さは制度運用上やむを得ないものとされており、半休を午前・午後どちらで取得した場合でも年次有給休暇は0.5日消化されることになります。
2)所定労働時間の半分
この方法を採用した場合、①のような時間的な不公平さの問題は解消されますが、別の問題がでてきます。それは、所定労働時間の途中の4時間を半休として扱えないということです。
つまり中抜けの4時間は半休として扱えないということです。
例)9-11時勤務、11-16時休息、16-18時勤務
これは4時間休んでいますが、半休としては扱えません。有給制度は「労働者のリフレッシュ」という理念を元にしているため、勤務時間にはさまれている4時間の休みは、休憩時間の延長として捉えられます。
半日有給制度における給与計算
半日有給制度の給与計算は、通常の有休取得の場合と同様です。方法としては、以下の3つがあります(労働基準法39条7項)。
1)通常通りの給与・賃金を支払う
有給休暇を取得しても、通常通り勤務した場合と同様に扱う方法です。給与計算が通常通りとなるため、事務処理が簡単です。
2)平均賃金を計算して支払う
平均賃金とは、ある労働者に対して過去3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額を言います(労働基準法12条1項)。この平均賃金をもとに有給休暇分の賃金を計算する方法です。
※賃金の総額には各種手当てが含まれ、特別手当(ボーナスや結婚手当など)は除外される
※上記の方法で算出した平均賃金が、総賃金額を同じ期間の労働日数で割った金額の60%を下回ってはならない
平均賃金をする場合は、土日などの休日も計算期間に含まれるので、①の方法よりも支払われる給料は少なくなると考えられます。
3)健康保険の標準報酬日額を計算し支払う
健康保険によって普段得ている給料を基準に段階的に定められた「標準報酬月額」から日割りで計算して、その金額を支払うというものです。
しかし、この標準報酬月額には上限があるので労働者にとって不利益になる可能性もあります。そのため、方法を導入する際には、労働者と使用者との間で労使協定をあらかじめ結んでおかなければなりません。
有給休暇取得時の給与支払方法として、企業は上記3つの方法の内どれか1つを導入することが可能です。
どの支払方法を導入しているかについて、就業規則などで規定・明示しておく必要があり、「人や時期によって支払う給与が安くなるような方法を選択する」という方法をとることは出来ません。
時間外労働について
「半日有給を取得したその日に残業した」ということが発生すると思います。
その場合の賃金の支払いについての直接の通達はありません。しかし関連する通達によれば、労働基準法は実労働時間主義を採用しているため、半日有給を取得した日に終業時刻を過ぎて仕事をした場合でも、実労働時間が8時間を超えない限り残業代を支払う必要はないとしています。
半日有給制度と時間単位付与
労働基準法(法39条4項)では、有給の時間単位付与を定めています。
この制度は労働者が有給休暇を時間単位で取得できる制度で、一定事項を規定した労使協定を結ぶことが必要となります。この制度がある場合、労働者に年に5回を上限として、時間単位での有給を付与できます。
この制度は半日有給制度とは異なる制度であるため、混同してしまわないよう注意が必要です。
この時間単位付与制度は、労使協定の締結が必要なことや管理が煩わしいなどを理由になかなか普及していないのが現状です。
まとめ
半日有給制度を導入するためには、会社においてあらかじめ決めておかなければならないことがあります。
これらを定めず運用を進めると、有給の管理や賃金の未払いなどの問題が発生してしまう可能性もありますので、導入前には制度についてよく検討する必要があるでしょう。