【労働基準法改正】年次有給休暇の取得義務化による会社の対応とは!?【有給】【2020年8月加筆】

労働関連法の改正や働き方改革

労働基準法の改正により、2019年4月1日から年次有給休暇の取得が5日に満たない従業員に対し、会社側は最低でも5日以上の有給休暇を与えることが義務付けられます。

これにより最低5日の有給が保障されることになるため、従業員のライフワークバランスが保たれることに期待が集まっているようです。

一方、ぎりぎりの人数で業務を遂行している中小企業では、相当な負担になることも予想されています。

有給休暇の義務化について、会社はどの様な対応をとる必要があるのでしょうか。

社労士5000

法律上の年次有給休暇とは

労働基準法上、年次有給休暇は「6ヶ月継続勤務し、かつ全労働日の80%以上出勤している労働者には有給休暇が付与される」としています。(39条1項)

付与される日数は勤続6ヶ月で10日、1年6ヶ月で11日、最終的に6年6ヶ月で20日まで付与されます。(同2項)

有給休暇は労働者に与えられる権利であり、労働者が請求する時季に与える必要(義務)がありますが、会社の運営を妨げる場合には「他の時季」に変更することも可能です。(同5項)

厚生労働省が行った全国調査によると、直近データの平成28年の有給取得率は49.4%となっています。また、有給休暇を1日も取得していない従業員は16.4%も存在すると言われ、取得率の改善が必要とされています。

有給休暇の取得義務化の「対象」と「会社の義務」

(1)取得義務化の対象

有給取得義務は、年10日以上の有給休暇の権利がある従業員が対象です。
主に以下に該当する者が、その対象となります。

  1. 6ヶ月以上継続勤務し80%以上出勤している正社員またはフルタイム社員
  2. 3年半以上継続勤務している週4日出勤のパート職員
  3. 5年半以上継続勤務している週3日出勤のパート職員

週の出勤日数が2日以下のパート職員は対象とはなりません。

また、計画年休制度によりすでに年5日以上の有給休暇を付与している場合や、従業員が自発的に年5日以上の有給休暇を取得している場合も取得義務の対象とはなりません。

(2)指定義務

上記の条件を満たしている従業員の有給休暇消化日数が、基準日から1年間のうち5日未満の場合、会社側が日にちを指定して有給休暇を取得させる必要(義務)が生じます。

ここでいう基準日から1年間というのは、従業員の入社日の6か月後から数えて1年ごととなります。

会社側の対応としては、入社日の6ヶ月後の日から起算して1年ごとに計算し、対象者の有給取得日数を把握しておかなければなりません。

このうち、取得日数が5日に満たない場合には、5日を満たすまで会社側が指定して有給休暇を取得させる必要があるということです。

(3)義務違反

違反した場合は、罰則として会社側に30万円以下の罰金が科されることとなります。

会社側の対応①ー運用ー

有給休暇の取得させるための会社側の対応としては、以下の2つの方法が考えられます。

(1)従業員ごとに個別の指定

有給消化日数が5日未満になっていないかを従業員ごとにチェックし、個別に日にちを指定するものです。

会社側による管理が必要になりますが、休暇の指定日はある程度柔軟に行えます。

(2)「計画年休制度」の利用

計画年休制度」とは、労使協定で定められた有給休暇のうち、5日を超える分についてはあらかじめ日にちを決めて付与する制度です。

労使協定であらかじめ5日間の有給を決めてしまえば、会社側の指定義務は当然なくなります。

上記(1)と違い、管理の必要性はありませんが、計画として決めた日を会社側の都合により変更することはできませんので、事業の見通しが立て辛い会社の場合には、後々支障をきたすことがあるかもしれません。

会社側の対応②ー管理ー

従業員の有休消化を進めるにあたり、会社が各人の有休取得状況を把握・管理する必要があります。

そのために必要なのが「管理簿」です。

使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。

まとめ

多くの中小企業では経営陣が穴を埋める必要が出てくるのではないかとの懸念も広がっている様です。

施行に備え、自社ではどのように対応するのか、余裕をもって対策を検討するようにしましょう。