派遣の同一労働同一賃金(労使協定方式)の賃金基準が改定!派遣元の6つの対応とは?

労働関連法の改正や働き方改革

改正労働者派遣法により、2020年4月から企業規模に関わらず、派遣元事業者は、派遣労働者に対しても同一労働同一賃金の対応が義務付けられました。

派遣元事業者の対応として、派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の確保をする「派遣先均等・均衡方式」または一定の要件を満たす労使協定による待遇の確保をする「労使協定方式」を選択して対応する必要があります。

このうち、「労使協定方式」と呼ばれる対応を選択した場合、「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」と同等以上であることが要件となっており、この「一般労働者の賃金水準」は毎年度、毎年6月から7月に翌年度のものが公表されることになっています。

2021年度の「一般労働者の賃金水準」は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、厚生労働省から今秋に公表されることが案内されていましたが、2020年10月21日に公表されました。

昨年とはどのように違い、派遣元事業者はどういった対応が必要になるのでしょうか。

社労士5000

2020年度(令和2年度)との違い

自社の賃金水準と比較する「一般労働者の賃金水準」は、異なる統計方法により算出されたもののどちらかを任意で選択できるものでしたが、それぞれの統計における賃金水準が変更されました。

また、賃金水準と併せて加味する「地域指数」「交通費相当額」の基準についても変更がありました。

賃金水準は職業ごと、地域指数は都道府県ごとに代わるため、今回は、職業を「システムエンジニア(情報処理・通信技術者)」、地域は「東京」を例に見ていきます。

①職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額

本統計におけるシステムエンジニア(情報処理・通信技術者)は、下記のように賃金水準が上がっています。

2020年度「1,292円」 → 2021年度「1,310円」(+18円)

各年次における基準値も、概ね数円~数十円ほど上昇しています。

②年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)

本統計におけるシステムエンジニア(情報処理・通信技術者)は、下記のように賃金水準が上がっています。

2020年度「1,427円」 → 2021年度「1,526円」(+99円)

各年次における基準値も、全ての年次において数十円~百数円ほど上昇しています。

③職業安定業務統計による地域指数

地域間の調整として考慮される地域指数では、「東京」は下記のように地域指数が上昇しています。

2020年度「114.1%」 → 2021年度「114.5%」(+0.4%)

他都府県についても、概ねコンマ数%ほど上昇しています。

④交通費相当額

交通費を全額支払わない場合、時給に上乗せする通勤手当相当分について、下記のように上昇しています。

2020年度「72円」 → 2021年度「74円」(+2円)

具体的に、どういった対応が必要なのか

今回の更新で、派遣元事業者としては具体的に下記の対応が必要となります。

①直近の労使協定にて定めた自社の賃金水準と、今回の新たな「一般労働者の賃金水準」を比較

直近の労使協定にて定めた自社の賃金水準が、今回の新たな「一般労働者の賃金水準」を上回っているものであるか比較し確認をします。

②新た水準を下回る場合には、自社賃金水準を引き上げ

自社の賃金水準が、今回の新たな「一般労働者の賃金水準」を下回っている場合には、自社賃金水準の引き上げをする必要があります。

特に、各統計の「基準値(0年)」の額は、各年次の基準額とは違い、これを超えている必要があるため、下回る場合には原則引き上げ対応をすることになります。

③地域指数の変更による引き上げ

上記変更された賃金水準とともに、変更された地域指数も加味させて、新たな自社の賃金水準とする必要がありますので、賃金水準の引き上げ後、新たな地域指数を掛け合わせます。

④交通費基準の変更による引き上げ

まず、自社が交通費を全額支払う方式か、時給に加味させる方式をとっていたのかを確認します。

後者であった場合、時給の交通費分を72円から74円に変更します。

⑤各要因による引き上げの対象となる従業員の、実際の賃金の引き上げ

各要因により賃金が引き上げられた場合には、実際に当該従業員の賃金を上げる手続き、処理をする必要があります。

⑥労使協定への反映および届出

各種要因により変更された賃金水準に合わせて、労使協定書を改定する必要があります。

届出は、次の事業報告時(6月)に事業報告とともに提出することになります。

まとめ

上記は「システムエンジニア(情報処理・通信技術者)/東京」を例に見ていますが、どの業種、地域においても概ね上昇をしています。

地域指数に変更がある地域である場合には、最低でも現賃金水準との比較は必要となりますので、当初の自社水準が統計の賃金水準を大幅に超えるような取り決めであったというような場合でない限り、基本的にほぼ全ての派遣元事業者が対象となると言っても過言ではないかと思います。

修正対応について、労働局としては厳しく取り締まるものではないとしていますが、変更の必要があるにも関わらずそれがされていないと、指導や是正の対象となる場合もあるとしていますので、早めに対応することが望ましいと言えます。