話題の「給与前払いサービス」とはいったい何なのか?社労士が解説!

今、巷では「給与前払いサービス」というものが、注目を集めています。あの大手総合商社の伊藤忠商事も給与前払いサービスに参入する様です。

多くの企業では月給制を導入していることだと思いますが、なぜ、今、給与の前払いが注目を集めているのでしょうか。

また、給与の前払いや前払いサービスの導入をすると、企業側にとって何かメリットはあるのでしょうか。

社労士5000

給与前払いサービスとは

給与前払いサービスとは、給料日を待たずに、既に働いた分の給与を先払いで貰うことができるサービスです。

月給制の従業員でも、働いた分だけいつでも給与がうけとれる給与前払い制度は、従業員にとっては魅力な福利厚生制度と言えるかもしれません。

自社内での前払い制度の導入は、企業側にとって煩雑な手続きが多く、負担が大きいのがネックでした。

また、利用する側の従業員も、上司の承認をもらわないといけないため、気兼ねしてしまい、制度を利用しにくいなどという側面もありました。

しかし、給与前払いサービスでは、給与前払いサービス業者によっては、24時間いつでも働いた分だけスマートフォンやパソコンから前払い申請ができ、最短翌日に給与振込口座へ振り込まれるなどと、従業員が利用しやすい様なサービスを展開しているものもあります。

法律上の問題は?

では、給与前払いサービスは、法律上問題のないサービスなのでしょうか?給与の前払いについては、法律上、以下のように定められています。

使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない(労働基準法25条)

要するに、出産や病気、災害などの非常時には、既に働いた分に関して請求があれば支払わなければならないという事です。

従業員が、会社側に対し前払いを強制する場合には、上記の法律が適用され、病気や災害などの非常時である必要があります。

それに対し、給与前払いサービスは、あくまで福利厚生制度のひとつとしての位置づけとなるため、会社が前払いについて良しとすれば、特に法律上問題になることはないのです。

給与の前払いが注目さている理由

人材確保が難しい昨今において、日払い週払いの形態の求人は非常に人気が高い傾向にあります。

ある求人媒体のフリーワード検索ランキングでは、常に上位に日払いや週払いといったワードが入ってくるそうです。平均応募者数も、月払いと比べ、最大で6倍の違いがあると言われています。

このように、単に従業員の金銭的な満足を実現させるだけでなく、企業としては人材の確保につながることから、このようサービスに注目が集まっていると考えられます。

会社側のメリットとは?

会社側にとって、前払い制度を導入することによって、次のようなメリットがあります。

(1)雇用の確保

上記でも述べた通り、日払いや週払いの制度は、月払いに比べて人気があります。

そのため、基本的には月給制であっても、この給与前払いサービスを導入により、手軽に日払いや週払いと同様の支払い形態とすることができます。

そうすることで、今まででは求人の対象となっていなかった日払いや週払いを希望する求職者についても、募集の対象とすることができ、結果として雇用の確保につながると考えられます。

(2)離職率の低下

特に、入社間もない時期というのは、金銭的にも困窮することが多い時期でもあるため、離職率が高いタイミングとされています。

しかし、給与の前払いが行えることで、金銭的な不安を解消できることから、入社間もない時期の離職を抑制することができるとされています。

また、シフト制を導入している企業で、急なシフト変更などがあった場合などには、予定外の収入を即時現金化することが出来るため、シフト変更などの本来であればストレスを感じる部分につても、前向きにとらえることが出来るため、結果として離職率の低下につながると考えられています。

さらに、ダブルワークをしているような従業員に関しては、前払いが可能な会社の方が、そうでない会社に比べ、優先度が高くなるといった傾向がある様です。

(3)従業員を守ることにもつながる

突然の出費を切っ掛けに、借り入れを繰り返し、高金利のカードローン返済に陥るといったことから、従業員を守ることにもつながります。

まとめ

給与前払いサービス事業者の中には、企業側は、サービス導入のための、準備資金やランニングコスト、専用の事務スタッフや問い合わせ窓口は一切必要ないとしているものもあります。

自社で一から行うとなると、人員をさいたり、準備資金を用意したりと、面倒なことが多くありますが、給与の前払い制度を導入することによって、従業員の満足度を上げ、雇用の確保や離職率の低下につながるのであれば、外部給与前払いサービスを利用するという選択肢も、悪くはないのかもしれません。