派遣や業務委託(請負、準委任)などの「外注業者」に勤怠管理は必要か

派遣と業務委託

業務委託を日常的に行う業界では、誰がどこまで管理を行うかという問題が常に付きまといます。

特にIT業界では、クライアント先の事業所内で、委託先のエンジニアが開発作業などを行ういわゆる「客先常駐」などといった形態で業務を委託・受託することが多くあります。

こういった場合、実際に作業を行うエンジニアの出勤や退勤、欠勤や有給などの勤怠管理は誰が行うのでしょうか。

業務委託の勤怠管理において、管理の方法や、管理の主体を誤ると「偽装請負」と疑われることも多くあることから、業務委託における作業者の勤怠管理については、厳格に行われる必要があります。

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請負の場合

システム開発などでよく用いられる請負契約による業務の委託の場合、作業者の勤怠管理を行うのは、作業者を雇用する受託事業者になります。

請負契約は、委託された業務を完成させることを目的とし、その方法や人員配置などについては、受託者の裁量をもって決められます。

納期までに完成させることを約束したものが完成していれば、どういった手順であろうが、何人配置しようが、受託者が決定をすることであり、そこに発注者は口出しをすることはできないのです。

ここで問題となるのが、受託業務が客先常駐によるもので、かつ、受託業務の一部を再委託している場合です。

商流で言うと、A社(発注者)→B社(受託者)→C社(再受託)といった場合のC社の作業者についてです。

C社は再委託であるため、大元の受託者(B社)が管理しなければならないような気がしますが、再委託が請負によるものである場合には、再委託を受託した会社(C社)の作業者は、C社自身により管理されます。

つまり、請負契約により業務を委託する場合には、どれだけ階層が下になっても、受託会社の作業者は、受託会社のみが管理をするということです。

準委任の場合

準委任契約は、システムの運用や保守などでよく用いられます。

請負契約と違い、仕事の完成を目的とするものではく、職務の遂行を目的とする契約形態ですが、準委任契約においても、業務を行う作業者の勤怠管理は、その作業者を雇用する受託会社のみが行うことになります。

請負契約と考え方は同様で、依頼された業務を遂行されれば、誰がやってもどういう工程をとっても受託者の自由なので、当然、作業者の管理について、発注者は指示をしたり、命令をしたりすることはできないのです。

状態が複雑になる場合は、これも請負と同様で、委託業務の一部を再委託している場合で、かつ、客先常駐による作業の場合です。

準委任契約による委託業務の場合、運用や保守などが多く、セキュリティ対策の関係上、客先常駐になることが請負より多くなります。

客先常駐である場合には、作業時間を契約上常駐先の労務時間に合わせることが多いことから、常駐先の社員と同じような勤務体系になることが多く、そうなると、委託先の作業者の勤怠管理も常駐先の会社が行わなければならないような気がしますが、勤怠管理を行うのは、必ず、作業をするものを雇用する会社のみになります。

これは、何度再委託をされようと変わりはありません。孫請けだろうが、ひ孫請けだろうが、その作業者の雇用会社が、管理を行うのです。

SESの場合

SES契約は、名称こそ違えど、中身は上記の準委任契約と全く同じになります。

中には、客先常駐による業務委託をSES契約と認識している方も少なからずいますが、それは誤りです。あくまで、単に名称が違うだけで、本質は準委任契約となります。

中身が準委任契約であるので、当然、勤怠管理についても、準委任契約と同様になります。

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派遣の場合

派遣契約は、上記までの業務委託契約とは違い、業務の完成や遂行を目的とするものではなく、派遣先の労働者として業務を行うため、派遣元の社員を派遣労働者として派遣してもらう契約形態です。

業務委託契約と違い、派遣先が派遣元の社員(派遣労働者)に、指揮命令を行うことができます。

指揮命令権が派遣先にもあり、日々どのような業務をどれだけの時間を行うのか、派遣先が決めることができるため、派遣元は、正確な労働時間を把握することが難しくなります。

そのため、原則、出退勤や休日、休憩時間等の勤怠管理は、派遣先が行うことになります。

他にも、派遣先は派遣労働者の安全衛生に関する事項や、ハラスメントに関する事項についてもその責任を負うとされています。

これらの事由は、原則、実際に労働を行う場所でしか発生しないため、派遣労働者が実際に業務を行う派遣先がその責任を負うことになるのです。

派遣労働者は派遣元事業者の社員であり、給与の支払いや有給休暇の付与を行うのは派遣元事業者であることから、勤怠管理についても派遣元が行うと考えがえてしまいやすいので注意が必要です。

まとめ

勤怠管理についてまとめると、以下のようになります。

  • 業務委託(請負、準委任、SES)は、作業者の雇用事業者が管理
  • 派遣は原則、派遣先が管理

一口に外注といっても、契約形態によって変わってきます。

勤怠管理は、労働者にとっては健康面や給与面に直結する事項であることから、正確に管理をするよう注意をしましょう。