社労士が切る!吉本興業の反社会的勢力への闇営業騒動は一般企業でも起こりえる!

大手芸能事務所の吉本興業の所属芸人による反社会的勢力への闇営業問題が、連日メディアに取り上げられていました。

当初は、反社会的勢力への闇営業が問題として取り上げられていましたが、その後、当事者の謝罪会見、それに対する会社の会見と事が進むにつれて、世の中の注目すべきところが「反社会的勢力への闇営業の問題」から「吉本所属芸人に対する会社上層部の扱い」に変わってきました。

この騒動は、結果、お家騒動として幕を閉じようとしており、芸能事務所という特殊な世界での話であったと考えるかもしれませんが、ごく一般的な企業でも、今回の騒動に当てはまる部分がいくつもあるのです。

今回は、吉本興業の一連の騒動を社労士はどう見るのか、解説していきたいと思います。

社労士5000

社労士が見るポイント1:反社会的勢力との付き合い

事の発端は、一部芸人が反社会的勢力が主催する会合に参加し、金銭を受領していたことです。

これは芸能界といった特殊な世界だけではなく、一般的な職種の企業においても、反社会的勢力との何らかの付き合いをすることはできません。

一般企業において考えられる付き合いとは、顧客や協力会社、自社の従業員などが考えられます。

最近では、各種契約書や誓約書などで「暴力団排除条項(暴排条項)」を設けている企業が非常に多くなってきていますが、まだまだ100%とは言えません。

特に、従業員向けの暴排条項付き契約書や誓約書、就業規則などを整備している企業は、あまり多くありません。

従業員を疑うようで心苦しい気もしますが、他の従業員や企業を守るためにも、暴排条項付き契約書や誓約書、就業規則を整備することは、反社会的勢力との関係を断つためにも必要な対策であると言えます。

社労士が見るポイント2:闇営業とは

吉本興業株式会社としては、反社会的勢力との関係があったことと併せ、金銭を受領していたことについても当初の問題としていました。

いわゆる「闇営業」の問題です。

闇営業というと、反社会的勢力から金銭を受領することを指すような報じられ方をしていますが、一般的な解釈で言うと、所属企業を通さず「金銭の受領」することを指して使うことが一般的です。

これは、一般企業で言うところの「副業」にあたる行為と言えます。

副業については、会社の任意で許可または禁止ができますが、そのルールについて就業規則で定めておく必要があります。

例えば、吉本の騒動の様に、禁止していたにも関わらず、自社従業員が副業をしていることが発覚した場合、禁止についてルール(就業規則)がない場合には、処分などができないことになります。

また、各種届出や労働時間の通算の問題など、各種ルールを定めておかないとトラブルになることが多くあるのです。

社労士が見るポイント3:社長の「首にできる」発言と契約解除

会見をした当事者の芸人が、社長に報告した際、「クビにすることができる」といった発言があったと主張していました。

これはもちろん、「解雇」や「解雇通達」の問題です。当然、一般的な企業にも関わることです。

解雇するには、どういった解雇かにもよりますが、一般的には「客観的合理性」や「社会通念上相当性」が必要になります。

吉本の件と同様な行為が自社であった場合には、懲戒解雇に相当されるものであると考えられますが、懲戒解雇はもちろんのこと、普通解雇であっても、解雇をするに至っては適正な手続きの元で慎重に進められる必要があるのです。

ただ、一般的な企業の従業員であれば、上記のとおりなのですが、こと当該芸人に関しては、業務委託契約であるとのことなので、そもそも解雇の問題は発生せず、同様の対応であれば契約解除がそれにあたると言えます。

まとめ

芸能界というと、どこか違う世界のような気がしなくもないですが、現実に落とし込んでみると、意外と一般的な企業でもありえる問題が見え隠れするものです。

自社で起きた場合には、どういった対応をしなければならないのか考えながら世間のニュースを見ると、また、変わった視点で見れるかもしれません。