IT企業で増えてきた兼業・副業。その社会・雇用保険の取り扱いは?

近年は多様な働き方を認める世の中となってきており、兼業や副業を認める企業が増えてきています。

一昔前では、人材や情報の流出を懸念し、兼業・副業は認めないとすることが一般的でありましたが、今では、多様な能力の人材を求めたり高い給与を支払えないことの穴埋めなどとして、兼業・副業を認める動きが高まっているようです。

特に、働く場所にとらわれることが少ないIT企業では、ほかの業種に比べて兼業・副業を認めるとする企業が増えてきていますが、兼業・副業を認める際に注意しなければならないことが、社内ルールの整備です。

その中でも、社会保険や雇用保険については、どのような扱いをしなければならないのでしょうか。

社労士5000

2つの会社で社会保険の加入要件を満たした場合

社会保険(健康保険と厚生年金)は、以下の2つの場合において加入が必要になります。

  • 法人(従業員数問わず)
  • 個人事業主(常時従業員数が5人以上)

さらに次の全ての要件を満たした際には、原則加入しなければなりません。

  • 所定労働時間が週20時間超
  • 月給が8万8000円(年収106万円)以上
  • 1年以上継続して適用事務所に勤務している(もしくは勤務する見込みがある)
  • 学生以外
  • 社会保険の対象となる従業員規模が501人以上の事業所に勤務

兼業・副業に伴い、2か所以上の会社等で社会保険の加入義務を満たした場合には、それぞれの会社において加入の手続きをする必要があります。

ここで、一般の加入手続きと違う部分としては、この加入手続きの際、加入する被保険者本人に、「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を管轄の年金事務所に届け出てもらう必要があるという部分です。

これにより、どちらの会社で保険関係の手続きをするのか、どちらの会社の保険者で保険証を発行するのかを決定します。

そして、以降の被保険者(加入者)にかかる事務を、選択された会社で行うことになるのです。

2つの会社で社会保険の加入要件を満たした場合の保険料は?

2つの会社で社会保険の加入要件を満たした場合の保険料は、両方の会社から得た収入を合算した額によって決められます。

会社負担分については、それぞれの会社の給与額に応じた保険負担をすることになります。

各社の負担する具体的な額については、加入時に届出る「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出後、年金事務所により金額を算出し、各社に対して、それぞれの割合による金額が通知されますので、それに従って天引きをすることになります。

2つの会社での雇用保険の加入は?

雇用保険については、通常、次の場合に当てはまる者については、原則加入しなければなりません。

  • 31日以上引き続き雇用が見込まれるもの
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上のもの

ただし、兼業・副業により、2つの会社で雇用保険の加入義務を満たしている場合であっても、社会保険とは異なり、加入が必要なのはどちらか一つの会社のみとなります。

どの会社で加入するかは、「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社」において、加入手続きをすることになります。

まとめ

兼業・副業を認める場合には、社内ルールだけではなく、各種保険の手続きなども必要となります。

すでに兼業・副業を認めている企業については、自社の制度が正しい運用をされているのか、もう一度確認をし、これから兼業・副業を進めようとする企業については、必要な事前準備をしっかりと整えてから、新制度を導入するようにしましょう。