キャリアアップ助成金(正社員化コース)の要件が厳しくなりました

助成金の中でも活用しやすいもののひとつとされているキャリアアップ助成ですが、支給要件が一部厳しくなりました。

変更の要点と、企業の対応について解説します。

社労士5000

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金は、厚生労働省の実施する制度で、短時間労働者、派遣労働者など非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進する事業者に対し助成金を支給する制度です。

全部で7つのコースがあり、その中でも、契約社員を正社員に転換させる「正社員化コース」が最も有名で、利用されているもののひとつかと思います。

正社員化コースでは、一人当たりの支給額が以下の通りとなり、年間20人まで対象とすることが出来ますので、最大年1440万円を受給できる可能性がある助成金です。

  • 有期契約労働者 → 正社員への転換:1人あたり57万円(42万7,500円)
    ※生産性の向上が認められる場合:1人あたり72万円(54万円)
  • 有期契約労働者 → 無期契約へ転換:1人あたり28万5,000円(21万3,750円)
    ※生産性の向上が認められる場合:1人あたり36万円(27万円)
  • 無期契約労働者 → 正社員への転換:1人あたり28万5,000円(21万3,750円)
    ※生産性の向上が認められる場合:1人あたり36万円(27万円)

※大企業は( )内の金額

今回、この「正社員化コース」の支給要件の一部について、厳格化されました。

何が変わったのか

いくつかある支給要件の一つとして、「正社員に転換することを約して(約束して)いない」という項目が以前からありました。

これまでは、支給申請書類に、この一文が確認のために入っていただけでしたが、今年度からは、「約して(約束して)いない」という部分について、より厳しくチェックされるようになりました。

具体的には、次のような確認を行う可能性があるとのことです。

  • 正社員の求人に対し契約社員として入社をしていないかどうかの確認
  • 契約社員の採用募集を行っているか企業HPや募集ページをチェック
  • 従業員へ直接連絡をする

「元よりあった要件が、さらに厳しく確認される」といった労働局内での審査基準が変わった、といった位置づけになるので、金額が変わるなどといった申請する側の何かが大きく変わるものではなかったため、大々的に発表はされていませんでした。

併せて、今年度の支給申請書類のひとつである「1-2正社員化コース対象労働者詳細」の(11)には「(正社員求人に応募し、雇用された者のうち、有期契約労働者等として雇用した場合を含む。)」という文言が追加されました。

会社の注意点

支給申請書に追加された文言にもあるとおり、募集要項を正社員としているにもかかわらず、契約社員となって助成金を申請していると、労働局としては、「正社員にすることを約しているのではないか」と考えます。

その理由は、キャリアアップ助成金は、元々、契約社員として募集し雇入れた人材を、正社員に転換させた(キャリアアップさせた)企業に対して支給され助成金であり、本来であれば、正社員だけの募集をしている企業が支給申請をできるはずがないからです。

そのため、将来的なキャリアアップを踏まえて人材採用を行っている企業については、あらかじめ契約社員として募集している必要があり、契約社員として募集するのであれば、ハローワークにおける求人票や、民間の求人サイト、自社のHPなどによる募集要項には、契約社員としての募集である必要があるのです。

求人媒体への募集要項の情報を使いまわしていたり、募集ページなどを頻繁に変更していない様な場合には、チェック・修正が必要になります。

まとめ

要件に違反した場合には、申請は認められないのは当然ですが、場合によっては、過去の申請分についても再調査の対象となる恐れがあります。

過去の申請分に違反があった場合には、不正受給とされ、助成金の返還返還されるまでの延滞金返還額の20%の額の違約金などを請求される恐れもあります。

申請の際には、細心の注意を払って進めるようにしましょう。