人事・労務からみるベンチャーやスタートアップ企業の成長戦略と事業フェーズとは?

スタートアップ企業やベンチャー企業には、成長著しい企業が多くあります。

そして企業の成長には、必ずと言っていいほど、「人」の問題が絡んできます。

人材が増え、組織が出来てくると必要となるのが、労務戦略です。労務戦略を検討するには、まず自社の事業フェーズを知る必要があります。

労務戦略における事業フェーズには、どういったものがあるのでしょうか。

社労士5000

4つの事業フェーズ

労務戦略における事業フェーズには、大きく分けて次の4つの段階があります。それぞれ、次のような特徴があります。

1)シードステージの組織(1~9名程度)

シードステージは、人数としては1名から9名程度の創業直後の段階を指します。

創業時や創業直後から組織に加入した人材には、一定数の株式を保有していたり、組織上重要なポジションについていることが多くあります。

創業直後は資金や人材などが不足することが多いため、役員報酬や派遣などの外部委託について、また、給与や賞与、残業代や社会保険料など組織作りにおいて検討が必要な事項は数多くあります。

ただ、多くの場合は、少数の優秀な人材がいて、創業社長が彼らと直接コミュニケーションをとることができるため、大企業のような過度に複雑な組織設計は必要ない場合が多いといえます。

多少組織設計が大まかなものでも、創業社長による直接のコントロールによって組織作りができる時期でもあります。

2)アーリーステージの組織(10名~50名程度)

アーリーステージは、人数としては10名から50名程度の段階で、創業後概ね2、3年位の時期を指します。

急成長するスタートアップ・ベンチャー企業は、このアーリーステージで数千万から数億円単位の多額の資金調達を行い、人材を大量に採用することが多くあります。

このような急激な人員の増加によって、創業社長のコントロールが少しずつ及ばなくなってきてしまうのがこの時期でもあります。

そのため、今までのような直接的なコントロールから、管理職を作るなど間接的なコントロールといった組織設計へと変化させていかなければなりません。

他方で、この時期のベンチャー企業は、ユニークな社内制度が最も生まれやすい環境でもあります。

社員数の増加による多様性が生まれつつも、社内コミュニケーションの機会を十分に確保できる組織規模であるため、積極的にトライ&エラーを繰り返すことが可能であり、魅力ある組織を作るための柔軟な発想を存分に発揮できる時期といえるでしょう。

3)レイタ―ステージ(IPO準備期)の組織(50名~)

レイターステージは、人数としては50名以上である場合も多く、企業としてはある程度成長・成熟した状態です。IPO準備期の準備が開始されるのもこの段階です。

IPOの準備期になると、後に控える上場審査を見越した労務体制を構築していかなければなりません。

これまでは、多少大まかでも何とかなってきたベンチャー企業でも、この段階になると労働関連法規制との適合性や、上場企業として社会的な責任を全うできる体制を作り上げるためのさまざまな社内ルールを整備する必要があります。

特に、社内規程類は、単に作成するだけではなく、実際の運用に落とし込む必要があります。

4)上場後の組織

上場企業ともなれば、一定水準の労務体制は構築されていることが前提となります。

しかし、上場企業も、長期的な成長戦略の中で新たな成長モデルを見つけていく必要があり、安定と成長のバランスが組織にも求められます。

より安定していくためには、福利厚生の充実や業務フローの整備、各種ハラスメントの防止体制の構築、女性社員、外国人社員のバランス調整や、社員研修などを行うことになり、より成長していくためには、組織が過度な硬直化をしないようにする必要があります。

ただ、この時期に新たな制度を設計するには、組織の規模が大きくなっている分、より慎重な検討が必要となります。

まとめ

以上のようにスタートアップ・ベンチャー企業の労務戦略は、そのフェーズによって大きく変化しますが、企業や個々の組織によっても変わる部分もあるため、必ずしもこれが正しいというものはありません。

自社がどういった組織で、どのようなフェーズにいるのかを意識することが、企業のより良い成長に繋がるのです。