SES事業者の出向は危険!?陥りやすい出向の間違いとは?

派遣と業務委託
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誰しも一度は聞いたことのある「出向」ですが、案外正しく理解している企業が少ないと感じます。

特にIT企業、とりわけSES事業を行う企業は、出向制度を勘違いしていることが多くあります。

出向制度を利用する場合には、どういったことに気を付けなければならないのでしょうか。

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出向の定義

出向とは、従業員がもともと雇用されている会社に籍を置いたまま、他の企業において長期に渡り当該企業のために働くことを言います。法的には、転勤や派遣、業務委託とは全く異なります。

出向は、派遣と同様、出向した従業員に対する指揮命令権が、出向先の企業に移ります。

つまり、出向先の企業は、自社で採用した従業員と同様に、出向してきた従業員に対して業務の指示をすることが出来るのです。

出向の種類

出向の契約は、出向元企業と出向先企業とで出向契約を締結します。その際、出向の方法として、主に次の二つがあります。

1)在籍出向

在籍出向とは、出向元の企業の従業員としての籍を残したまま他の企業に出向して働くことを指します。当然、出向先の企業で働いていたとしても、出向元の企業と従業員の間の労働契約は消滅しません。

従業員と出向元、出向先のそれぞれの間には二重の労働契約関係が成立することになります。
そして、指揮命令権が出向先企業に移転します。

指揮命令権は出向先に移転しますが、出向元事業主との間に雇用契約関係があるだけではなく、出向元事業主と出向先事業主との間の出向契約により、出向労働者を出向先事業主に雇用させることを約して行われていることから、労働者派遣には該当しません。

2)転籍出向

転籍出向とは、出向元の従業員としての身分を失くし、他社の従業員として勤務させるものを指します。

従業員は元の会社を退職の扱いとなり、転籍先が新たな雇用先になるため、在籍出向よりも雇用調整目的として実施される位置付けになります。

一般的な解釈における出向とは、在籍出向を指します。

従業員を出向させるには

出向について、直接義務や規制などをする法律はありません。

そのため、出向させるための根拠になるものは、就業規則労働協約などの社内規定になります。会社として出向について何ら定められていなければ、出向を行うことはできないのです。

したがって、将来的に従業員を出向させるためには、社内における出向制度を定めておかなければなりません。

SES事業者が陥りやすい出向の間違い

IT企業の中で、取引先に自社の従業員を常駐させるかたちでシステム開発などを行う、いわゆるSES事業を行う企業の間で、出向を間違った形で認識されていることが多くあります。

派遣事業者の資格を持たない企業が、出向の大きな特徴でもある指揮命令権の移転を目的として、SES事業を行う際に一般的に行われる業務委託契約(準委任契約)ではなく、出向の形態で自社の従業員を取引先に送るというものです。

要は、出向という制度を隠れ蓑にして、実質労働者派遣を行うということです。この行為は偽装請負と判断される可能性が非常に高い行為です。

在籍出向をさせることを「業(事業)として行う」場合、それは原則として労働者供給事業に該当します。

「業として行う」とは、在籍出向させることをビジネスとして、反復継続的に行うことをさします。

つまり、複数のクライアントに対して、出向の形態を利用してサービスを提供する行為は、労働者供給事業にあたり、違法行為となる可能性があります。

ただし、例外として、次のような目的であるものについては、出向が繰り返し(反復継続的に)行われていたとしても、社会通念上、業として行われていると判断しないことがあります。

  1. 労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する
  2. 経営指導、技術指導の実施
  3. 職業能力開発の一環として行う
  4. 企業グループ内の人事交流の一環として行う

1は、経営危機により労働者を解雇しなければならない様な状況の場合、解雇等離職させるのではなく、関係会社に出向させることで、労働者の離職を回避できる場合には、出向を繰り返し行っても業として判断されることはないという趣旨です。

ここで言う「関係会社」とは、単に社長同士が知り合いといった場合や、過去に取引があったなど、資本関係や親子関係などがなくても対象となります。

2、3については、ビジネスとして行うものでなければ、反復継続的に行うことも可能です。この場合、出向契約書などの書面において、経営指導・技術指導・職業能力開発の対象者や期間などを定めておく必要があります。出向先の制限などは特にありません。

4における「企業グループ」とは、出向元と出向先に資本関係や親子関係などがある必要があります。この場合も、ビジネスとして行うものでないことが必要です。

したがって、SES事業として、クライアントから委託されたシステム開発などを行うために出向の形態を利用することは、原則できないのです。

まとめ

SES事業者としては、クライアントが作業者に対して直接指揮命令が出来ることがベストと考えることが多くありますが、それを達成するために出向を使うことは、偽装請負となります。

SES事業者は特に、出向の利用について注意が必要です。