会社が有期契約社員の雇止めを行う場合の注意
近年注目されていた雇用における「2018年問題」。 有期雇用契約の労働者に対する「雇止め」についてのトラブルが増加するだろうとされていました。
雇止めをしてもトラブルに発展しないようにするには、どのような点に注意したらいいのでしょうか。
「2018年問題」とは?
2012年に改正された労働契約法により、いわゆる「無期転換ルール」について法律が制定されました。
これは、2013年4月以降に有期労働契約を締結した社員が、2018年4月以降に無期労働契約の社員としての転換を会社に申し出ることが可能となるものです。
無期転換ルール
- 有期労働契約の更新が通算5年を超えた場合、6年目の契約以降、有期労働契約社員から無期労働契約社員への転換を申し込める権利が労働者に発生
- 対象社員からの申込みがあった場合がされると、会社側はそれに承諾したものとみなされ、原則申し込みの拒否はできない
会社として、有期労働契約社員から無期労働契約への申込みを避けるために、申込みの権利が発生する前に雇止めをする手段がとられることが予想されました。
2013年4月以降に契約した社員が、契約6年目に突入する初めての年である2018年に、雇止めに関する問題が続出すると危惧されていたのが、所謂「2018年問題」です。
問題となる「雇止め」とは?
雇止めとは一般的に、有期契約社員を繰り返しの契約更新によって一定期間雇用の継続があったにも関わらず、前触れなく社員の意思関係なしに契約更新をせずに期間満了として退職させるなど、契約更新を会社が拒否することをさします。
季節的な仕事や一時的な仕事の場合は、契約の更新がされなくても「雇止め」とはならないため問題になることはありません。
そもそも、「雇止め」自体が違法なことという訳ではありません。
しかし、無期労働契約への転換を回避するための雇止めや、雇止めの理由が不当なものと判断された場合、その雇止めが違法・無効となることがあります。
雇止めが不当とされた場合
もし雇止めが無効とされた場合、会社は以下のような請求をされることがあります。
1)社員の継続雇用
雇止めが無効・撤回された場合、契約が更新され社員の雇用が継続されます。
2)未払い賃金の請求
1の継続雇用と合わせて、本来の契約更新日以降に発生するであった賃金を「未払い賃金」として請求されるケースもあります。
3)無期転換ルールに沿った無期労働契約への転換
2013年4月以降に契約を終結し契約が通算5年を超える有期労働契約社員の場合には、申込みがあれば無期労働契約への転換をする必要があります。
雇止めが正当とされるには
正当な雇止めには、以下の1~4の要素が必要となります。
1)契約締結時に明示する
雇止めの可能性がある場合、雇入れ時の契約書などに更新の有無や契約更新をする基準などを明確に示し、きちんと説明をしなければなりません。
これは、契約の更新時も同様にする必要があります。
2)前もった予告
継続雇用が通算1年以上のまたは契約期間が1年超、契約更新が3回以上の有期契約社員を雇止めする場合、当該社員に対し契約解除する30日前までに予告する所謂「解雇予告」に当たるものが必要となります。
3)理由の明確化
雇止めの対象となった社員から、雇止めの理由についての証明書を請求されることがあります。
その場合、遅滞なくこれを交付しなければなりません。なお、証明書を請求されない場合でも、雇止めには正当な理由が必要となりますので、注意をしなければなりません。
雇止めの理由は「担当業務の終了」「更新回数の上限によるもの」「勤務態度の不良」など、契約期間満了とは異なる理由が求められます。
また、雇止めを行うには正当な理由が必要となります。正当な理由というのは、社会的にみて相当性があり、客観的にみて合理性があるかどうかで判断されます。
4)契約期間への配慮義務
使用者は、更新が1回以上かつ継続雇用が1年を超えている有期契約社員との契約更新を行う場合、当該社員の希望や契約実態に応じて契約期間を出来るだけ長くするように努める義務があります。
これらの手続きを行わないと、雇止めが直ちに無効・違法となる訳ではありません。しかし、適法・有効な雇止めを行うには必要な手続きとなっています。
自社が契約社員と契約しており、雇止めの可能性が存在している場合、上記の制度を早急に作成・運用していかなければなりません。
まとめ
2018年問題はあくまで起点に過ぎず、2018年以降も「雇止め」の問題は持続して発生する問題の一つとなります。
有期雇用と言えども、雇止めが自由にできる訳ではないということを再度確認し、雇入れる際にもしっかりとした採用計画・社内運用を立てる必要があります。