リモートワーク導入する際の4つの法律的ポイント【2020年10月加筆】

 

社労士5000

リモートワークの取り組み

スタートアップ・ベンチャー企業では、オフィスにくることなく、自由に働くというところも増えてきています。

リモートワークについては、優秀な社員を採用することにつながる、社員も出勤しないでよいので、モチベーションが上がるなど、良い面がたくさんあります。

しかし、一方、リモートワークを導入する際に、気を付けないといけないのは、法律です。今回は、労働法の法律について、みていきます。

就業場所の定めをする

そもそも、現状、日本の労働法は、会社に出勤し、●時~●時まで仕事するといった働き方を想定しています。
よって、リモートワークは、法律上の制度として定められたものではありません。

法律上、労基法上、使用者は、労働者に就業場所を明示しなければならないと定められていますので、就業場所については、オフィスでも自宅でもその他の場所でも、あるいはそのどれでもよいと定めることが必要です。

労働時間管理をきちんと行う

リモートワークなので「●時~●時までは、パソコンの前にいてください」というのではなく「ある程度、自由に働いてください」というのが一般的です。

実際には、自由な働き方を認めたいという要請から、フレックスタイム制や裁量労働制を同時に適用する場合が多いでしょう。

このように、比較的自由な設計が認められているリモートワークですが、導入に当たって気をつける必要があるのは、労働時間管理です。

オフィスにいれば、社員が何時に出社して何時まで働いているかをある程度把握できますが、リモートワークの場合には、異なる場所で働いているため、会社としては、労働時間の把握が困難な場合があります。

例えば、最近では、リモートワーク社員も社内SNSなどを利用して常にオフィス等とオンラインでつながっている場合が多いので、SNS上のログの管理やクラウトの勤怠管理システムを導入することにより、労働時間を正確に把握することが可能となってきているので、このような機能を導入することが考えられます。

事業場外みなし労働時間制を適用できる場合とは

また、会社によっては、リモートワークを導入するにあたって、事業場外みなし労働時間制を採用している場合があります。

しかし、事業場外みなし労働時間制を適用できる場面はかなり限定的になっています。

具体的には、リモートワークの場合の事業場外みなし労働時間制は、以下の要件を全て満たすことが必要です。

  1. 業務が自宅で行われること
  2. パソコンが使用者の指示で常時通信可能な状態となっていないこと
  3. 作業が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

上記要件の2については、従業員が、自分の意思で通信可能な状態を切断することが使用者から認められている必要があります

また、使用者から労働者に対してメールや社内SNS等で随時具体的な指示を行うことが可能であり、指示を受けた場合には労働者がこれに即応しなければならない状態(指示待ちの待機状態や指示を待ちながら作業している状態など)が常時続いている場合も、2の要件を満たしません。

したがって、在宅勤務社員に対し、業務遂行中は社内SNS等においてずっとオンラインで繋いでおくことを義務付けているような場合には、本要件を満たさないことになります。

3については、単に業務の目的や目標、期限などの基本的事項を指示するだけでは「具体的な指示」には該当しませんが、個々の作業の実施方法等について逐一具体的に指示する場合には、本要件を満たさないこととなります。

残業代・割増賃金の問題

リモートワークでも、時間外労働や休日労働、深夜労働に対する割増賃金は発生します。

ただ、リモートワークの場合、仕事に従事している時間とプライベートの時間との区別が難しい場合があります。

そのため、実際にどこまでを労働時間として換算すべきか判断が難しい場合があります。

しかし、たとえば、在宅で朝から18時頃まで仕事をしていたが、夕食を食べて夜戻ってきてまた業務を行った場合などに、業務時間をきちんと把握していないと、想定外に時間外労働割増賃金が発生し、場合によっては深夜割増賃金も発生してしまうなどの自体が生じ得ます。

したがって、このような観点からも、労働時間の管理は重要となるのです。