IT企業が、外国人を雇用する際に労務で気を付けるべき4つのポイント

社労士5000

人手不足解消の外国人を雇用

IT企業では、優秀な外国人の社員を採用し、大企業に負けず劣らずの多国籍なオフィス環境となっているところが多く存在します。

弊社の顧問先のIT企業においても、外国人がエンジニアとして活躍しているケースなど多く見られます。

また、社会的にも、企業の人手不足が深刻となっており、日本人だけではなく外国人の雇用を積極的に行なっていこうという動きが高まっています。

外国人の雇用と労務管理上の注意点

実際に外国人を雇用することになった場合に、労務管理上注意しなければならない点を確認しておきましょう。

(1)在留資格の確認

外国人は、出入国管理及び難民認定法(入管法)で定められている「在留資格」の範囲内において、日本での活動が認められています。

したがって、外国人を雇用する場合には、これらの就労可能な在留資格を持っているかということを、人事担当者が確認する必要があります。

就労資格がないにも関わらず就労している場合には「不法就労」になってしまいます。また、資格外活動許可が必要であるにも関わらず、それを受けていない場合にも「不法就労」になってしまいます。

入管法には「不法就労助長罪」というものがあり、不法就労させたり、不法就労をあっせんした者は、3年以下の懲役および300万円以下の罰金に処せられます。

不法就労助長罪は、不法就労した本人だけではなく不法就労させた企業側も罰せられてしまうので、注意が必要です。

通常、故意に在留資格を偽装したりというようなことを企業が行なうことは一般的にはないと思いますが、怖いのが「在留資格を確認していない」ケースです。

在留カードによって在留資格を確認していれば、たとえその外国人が不法就労者であったとしても、企業側に過失はないとされますが、在留資格の確認を怠っていた場合には、企業に過失があり、不法就労助長罪に該当してしまいます。

そのため、外国人を雇う際には、在留カードを確認することを絶対に忘れないようにしてください。

企業におススメなのが、就業規則等に以下のような文言を入れておくことです。就業規則に明記しておけば、人事担当者が交代したりしても確認を忘れることはありませんし、就業規則がより実務的なものになります。

就業規則の規定例

(入社提出書類)

第○条 外国籍の者については、入国管理法上必要な在留資格、在留期間、国籍等を確認するために「在留カード」または「パスポート」を提示しなければならない。

(2)労働関係法令の適用と社会保険への加入

勘違いしている人もいるのですが、日本国内で就労する外国人については、国籍を問わず労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法(労災保険法)等の労働関係法令が適用されます。

また、労働基準法において、国籍によって労働条件を差別することは禁止されています。

具体的な例をあげれば、たとえば、日本よりも賃金水準の低いベトナム出身の社員について、日本人社員よりも給与水準を低く設定している、といったケースは、まさに国籍による労働条件の差別に該当します。

また、社会保険や雇用保険については、原則として、国籍を問わず日本人と同様の条件を満たした場合には、被保険者として取り扱うこととしています。そのため、外国人だから社会保険に加入させなくてもよい、というような取扱いをしてはいけません。日本人と同様に、加入条件を検討したうえで加入か否かの判断をしてください。

さらに実務上、外国人が「どうせ年金の受給資格期間(10年)を満たさないから、厚生年金保険には加入したくない(保険料を負担したくない)」というようなことを会社に要求してくるという話をよく耳にします。

会社としては加入させたいが、従業員側が拒否するケースです。社会保険に6か月以上加入した外国人については「脱退一時金制度」という払い込んだ保険料を一定程度還付される制度があるので、外国人の従業員側が社会保険の加入を拒んだ場合には、本制度について説明して、納得してもらう必要があります。

(3)外国人労働者雇用労務責任者の選任

外国人労働者を常時10人以上雇用するときは「外国人労働者雇用労務責任者」を選任する必要があります。

この外国人労働者雇用労務責任者は、外国人労働者の雇用や労働条件等に関する事項についての管理や、関係行政機関との連絡など、外国人労働者の雇用や労務管理を担当することを職務とします。

原則として、人事課長、労務課長など管理職のなかから選任することになります。

外国人を10人以上雇用する場合には、忘れずに選任してください。

(4)外国人雇用状況届出制度

雇用対策法という法律にもとづいて、外国人労働者(特別永住者を除く)を雇用した際や離職した際には、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、ハローワークに届け出ることが義務づけられています。

この届出を怠ると、30万円以下の罰金が科されますので、漏れなく届け出るようにしましょう。