自社従業員が感染症にかかった
新型コロナウイルスが猛威をふるっていますが、感染症はコロナだけではありません。
これからも、色々な感染症と向き合っていくことが求められます。
会社としても、従業員が感染症にかかったときに、どのような対処することが適切なのかを把握しておく必要があります。
従業員から会社に損害賠償請求されたときの対処法
新型コロナウイルスなどの感染症に感染した従業員から会社に損害賠償請求された際には、会社はその義務を負うのでしょうか?
このような訴えを起こされた場合には、①安全配慮義務違反の有無、②因果関係の二点が重要な争点となることが予想されます。
①安全配慮義務違反の有無
労働契約法上、使用者は労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならない義務(これを「安全配慮義務」といいます)を負っています。
まず、①安全配慮義務違反があったかどうかの判断において、当該使用者がとるべき措置の内容は、ケースバイケースにはなります。
しかし、新型コロナの例では、例えば、緊急事態宣言発令後もいわゆる「3密」が生じる業務運営を回避する手段の検討すら行わず、何ら感染防止措置をとらずに万全と業務を行っていた場合には、安全配慮義務違反になります。
一方、会社としてとりうる感染予防措置は可能な限り実施していたのであれば、安全配慮義務は否定されます。
②因果関係
次に、②因果関係についてですが、厚労省からは令和2年4月28日付「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」で、行政が労災給付をするにあたっての判断枠組み示しました。
これは、あくまで、行政の判断基準なので、裁判の判断内容に直接影響を与えるものではありません。
しかし、現実の裁判においては、いわゆる「過労死基準」(基発第1063号平成13年12月12日、改正基発0507第3号平成22年5月7日)と呼ばれる通達も同様に行政通達であるものの、事実上裁判において、過労死等における因果関係の判断にあたり参考にされています。
なので、感染症の因果関係においては、裁判所は安全配慮義務違反における因果関係を検討するにあたって上記通達の同判断枠組みが参照されることが考えられます。
この通達では、感染源が明らかである場合に当てはまらない場合には、以下を踏まえて個別に判断するとしています。
- 同一労働環境に複数の感染者が確認されているかどうか
- 顧客等との近接や接触の機会の有無
よって、職場に他の感染者がいる場合や、当該従業員が顧客等と近接や接触の機会が多い場合には、当該新型コロナウイルスなどの感染症は業務に起因して感染したものとして推定され、因果関係があるとされる可能性があります。