在宅勤務(テレワーク)のときは、通勤手当は支払う必要ある?【解説】【2021年10月加筆】

社労士5000

在宅勤務の場合、通勤手当の支払いは必要なの?

企業によっては、従業員を在宅勤務としていて、1か月全く会社に出社しない従業員もいる場合もあります。

この場合、通勤手当は支払わなければならないでしょうか。

賃金規程の定め方

ここでのポイントは、会社の賃金規程です。

例えば、通勤手当を交通費の「実費」の趣旨として支給する旨の規定がある場合は、通勤手当の支払いは不要です。

労働基準法上、使用者は、通勤に関する費用の支払いを義務付けられていません。しかし、各社が人材獲得や福利厚生の観点から、独自にルールを設けて支給しているのが通勤手当です。

この通勤手当についてどのように支払うかは労使の合意(賃金規程)に基づきます。

基本的には賃金規程に通勤手当の支給ルールが規定されているため、その内容を確認する必要があります。

通勤手当を通勤費の「実費」の趣旨として支払うことが明記

通勤手当は、従業員ごとに、その利用する公共交通機関の種類、経路を申告させ、会社が最も経済的かつ合理的な経路を認定し、その経路に相当する額を支給するのが一般的です。

例えば「通勤手当は、通勤に公共交通機関を利用する者に対して、その運賃、時間、距離等の事情に照らし、会社が最も経済的かつ合理的と判断した通勤経路及び方法によって算出し、支給する」と規定している場合です。

このように通勤手当が、通勤費の「実費」の趣旨であることが明確な場合には、1か月の在宅勤務により実費が一切発生していない以上、通勤手当の支給は不要となります。

なお、会社によっては、定期代の6か月相当額をあらかじめ支給しているケースもあります。

そのような場合には、定期の払い戻しが必要になります。払い戻しに関しては従業員の判断に任せず、会社で指示をしてください。

「1か月定期代」など支給方法が特定されている場合

上記と同じように、通勤手当が通勤費の「実費」の趣旨であることは同じであるものの、支給方法が「1か月定期代」などと特定されている点で異なります。

この場合でも、通勤手当が通勤費の実費の趣旨である以上、在宅勤務により実費が一切発生していない場合は通勤手当を支給する必要はないと考えます。

問題は、週1回は出勤日があるなど、実費が発生する場合です。

通勤手当をどのように支払うかは労使の合意(賃金規程)に基づくため、会社が、実費の支払い方法として、1か月定期代を支給すると特定している以上、この規定に基づき1か月定期代を支給する必要があると考えます。

そのため今後はこのような在宅勤務を想定して、「在宅勤務(在宅勤務を終日行った場合に限る。)が週に4日以上の場合の通勤手当については、毎月定額の通勤手当は支給せず、実際に通勤に要する往復運賃の実費を給与支給日に支給するものとする」のような支給ルールを定めた方がよいです。

なお、このような支給ルールの変更は、従業員の同意を得て行うのが望ましいとは思いますが。あくまで通勤費の実費の支給方法の問題であり、このような規定の変更については不利益変更には当たらないものと考えられます。

通勤手当を交通費の実費とは無関係に一律で支給している場合

従業員の通勤経路や費用に関係なく、一律に通勤手当と称して支給している場合には、そもそも通勤手当が交通費の実費の趣旨として支払っているものとはいえないため、仮に在宅勤務で全く出社していない場合でも支給をしなければならないと解されます。

雇用契約書や賃金規程に通勤手当の支給ルールが明記されていない場合

これまでの会社での取り扱いや当事者の認識などから、上記のどれに該当するかを判断することになります。

なお、賃金規程に通勤手当に関する支給ルールの規定がなくても、例えば欠勤控除に関する規定において「1か月間、欠勤などで通勤の実態が一切ない場合は通勤手当を支給しない」等の規定があることもありますので、念のため、通勤手当の部分だけではなく、欠勤控除に関する規定の部分もご確認ください。