新型コロナウイルスを理由にIT企業が退職勧奨するときの注意点【解説】

社労士5000

退職勧奨の規定とは

新型コロナウイルスの影響で、従業員を抱えることができない。でも、解雇するのは、厳しいって聞いたことある…

そこで、従業員に辞めてもらうように説得したいと考えるかもしれません。

このように、従業員に辞めてもらう説得すること退職勧奨といいます。

新型コロナウイルスを理由とした退職勧奨は許されるのでしょうか?

退職勧奨を行う前に

会社として意識するべきなのは、雇用関係の解消は従業員にとって生活の基盤を失う重大なものです。

また、会社としても、一回従業員に辞めてもらうと、もう一度雇うことは困難です。

そのため、雇用調整助成金の特例措置を利用できないか、行政機関や金融機関が出す雇用維持支援策を利用できないか、テレワークを活用できないかなどを検討する必要があります。

退職勧奨は適法?

上記のような努力をしても、雇用関係の解消に踏み切らざるを得ない場合には、退職勧奨を適正に行う必要があります。

会社から、一方的に辞めさせる場合を解雇といいます。

解雇の場合、法律上の規制があり適法性が厳格に判断されます。厳しい法律制限があるため、会社としても慎重になるべきです。

また、解雇は、会社側が一方的に行うので、後々のトラブルに発展しやすいといった点があります。

そこで、まずは会社として、従業員と誠実に話し合いを行うことが重要です。

退職勧奨は、会社と従業員との間で退職に向けた話し合いは行いますが、実際に退職するかどうかの決定は従業員自身が行います。

ポイントとしては、雇用契約を解消する場合であっても、一方的な解雇は避け、まずは労使間で話し合いきちんと事情を説明し従業員に納得してもらうことが重要です。

話し合いの際は解雇されたとの誤解を与えないよう、伝え方に配慮することが必要です。

退職勧奨の注意点

退職勧奨を行う際には、きちんと会社の状況や今後の見通しなどの事情を説明した上で、従業員本人に納得して退職に合意してもらうように進めることが大切です。

特に、今回は、新型コロナウイルスという未曽有の事態であること、その影響は、具体的にこうであることなどを話す必要があると思います。

あくまでも退職するかどうかの決定は従業員にあるので、会社が本人に退職を強要するかのような言動は違法になります。

また、従業員本人が解雇されたと誤解を受けないように、解雇ではなくきちんと退職勧奨であることを明確に伝えることも大切です。

例えば、従業員側から解雇希望の旨をいわれた場合であっても、解雇の通知をすることは考える必要があります。

解雇は、あくまで一方的な使用者側の意思表示なので、後から、解雇の同意はあり得ず一方的に会社が解雇したと判断される可能性もあります。

退職してもらう場合に、考慮すべきこと

自主的な退職に応じてくれる従業員に対しては、今後の生活保障等の観点から一定の配慮をすることも検討した方がよいと思います。

例えば、離職票の作成時には退職理由を定める必要がありますが「会社都合」とすることで、失業給付金の支給開始日や支給日数等の点で従業員には有利になります。

ただし、キャリアアップ助成金など各種助成金を利用している場合、現時点では会社都合退職とすることにより助成金が不支給となったり返還を求められることがありますのでご留意ください。

なお、再雇用を必ずするという約束のもとで従業員を退職した形にして、再雇用までの期間中に失業給付金を従業員が受給した場合、失業給付金の不正受給と認定される可能性があるのでご注意ください。