労働者を雇用したら絶対に必要な労務管理における「法定三帳簿」とは?労働局調査でも必要になる。

労働者を雇用する事業者は、雇用する労働者の管理に関する書類として、法律上、作成をしなければならないものがあります。

それが、「労働者名簿」「出勤簿」「賃金台帳」です。
これらは法律上揃えなければならないことから、「法定三帳簿」などと言われることがあります。

この法定三帳簿ですが、ベンチャー企業やスタートアップ企業では、労務管理体制が整っていなことが多く、法律上必要にもかかわらず、作成がされていないことが多くあります。

この法定三帳簿とは、どういったものなのでしょうか。

社労士5000

労働者名簿

労働者名簿は、各事業場ごとに各労働者の情報について法律上必要な事項について記入します。

各事業所ごとに作成する必要があるので、本社とは別の場所に支店や支社、工場などがある場合には、その場所ごとに作成する必要があります。

記載事項

記載事項は次のとおりです。

  • 労働者の氏名
  • 生年月日
  • 履歴
  • 性別
  • 住所
  • 従事する業務の種類(従業員数が30人未満の場合は不要)
  • 退職年月日およびその事由(退職の事由が解雇の場合はその理由を含む)
  • 死亡の年月日およびその原因

労働者名簿の記入事項に変更があった場合は、遅滞なく訂正しなければなりません。

労働者名簿は、パートやアルバイトを含めたすべての労働者について作成することが必要であり、労働者を1人でも雇っている場合は、必ず作成する必要があります。

労働者名簿は、労働者の死亡、退職または解雇の日から3年間保存する必要があります。
つまり、従業員でなくなった後も保存義務があるのです。

賃金台帳

賃金台帳は、賃金計算の基礎となる事項や賃金の額などについて賃金の支払いのたびに遅滞なく記入する必要があります。

これも労働者名簿同様、各事業所ごとに作成する必要があるので、本社とは別の場所に支店や支社、工場などがある場合には、その場所ごとに作成する必要があります。

記載事項

記載事項は次のとおりです。

  • 氏名
  • 性別
  • 賃金計算期間
  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 時間外労働、休日労働および深夜労働の時間数
  • 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
  • 労使協定により賃金の一部を控除した場合はその金額

賃金台帳の保管期間は、最後に記入された日から3年間保存する必要があります。

従業員の賃金に関する事項の為、正確に集計・記載する必要があります。

出勤簿(タイムカードを含む)

出勤簿は、勤務時間に関する事項について記入します。

タイムカードなどによる方法で記録することも可能です。

記載事項

記載事項は次のとおりです。

  • 氏名
  • 出勤日
  • 始業・終業時刻
  • 休憩時間

出勤簿は、労働者の最後の出勤日から3年間保存する必要があります。

残業などの時間外労働や、給与計算に関する事項のため、改ざんなどが起こらぬよう、正確に記録される必要があります。

作成していなかった場合

法定三帳簿が適正に整備されていない場合、30万円以下の罰金となる可能性があります。

また、法定三帳簿は労働基準監督署による各種監督の際に提出を求められることが多く、これらの書類の提出を拒否したり、虚偽を記載した書類を提出したりした場合は、是正勧告社名の公表など行政処分の対象となる可能性もあります。

まとめ

ベンチャー企業やスタートアップ企業は、本業を優先するあまり、労務管理関係がおろそかになりがちですが、労務トラブルが発生した際は、殆どの場合に必要になり、ないと会社側が不利になったり、ないこと自体を処罰されたりと、その代償はかなりのものとなります。

記入すべき事項や各帳簿の保存期間は法令等により定められているため、内容をしっかりと把握したうえで、適切に整備・保存するようにしましょう。