一定規模の企業は、社会的責任のひとつとして、障がい者の雇用をしなければなりません。
障がい者雇用は、雇用をできる・できないにかかわらず、一定以上の会社は義務になります。
どのような義務で、どういった会社が対象となるのでしょうか?
障がい者雇用の義務とは
対象となる会社には、主に次のような義務が課されます。
(1)法定雇用率の達成
会社は、常時雇用する労働者における一定割合を障がい者の雇用に当てなければならないとされています。
この割合を法定雇用率といい、現行法上その割合は2.2%とされています。
つまり、原則従業員が45.5人いる場合には、障がい者を1人雇用する義務があるということです。
ここで言う常時雇用する労働者とは、以下のように定義され、常時雇用する労働者を数えます。
- 期間の定めのない者
- 雇入れから1年を超えて雇用されることが見込まれる者であり、かつ、
- 週の所定労働時間が30時間以上の労働者は1人=1カウント
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満である労働者は、1人=0.5カウント
また、週の所定労働時間が一定ではないシフト勤務の労働者の場合には、シフトを組んだそれぞれの週の、年間での合計時間数を対象期間の月数で割り、その時間数により常時雇用としてカウントするのか否かを判断します。
実労働者数とイコールではないため非常に間違えやすく、誤認による申告や未申告が多くあります。
(2)差別的取り扱いの禁止
会社は、募集、採用、賃金、配置、昇進、降格、福利厚生等あらゆる場面において、障がい者であることを理由とする差別的取扱が禁止されています。
(3)社内体制等の整備
会社は、障がい者が職場で働くにあたっての支障を改善するための措置や障がい者である労働者からの相談に応じ、対応するための社内体制の整備をしなければならないとされています。
ただし、その措置を講じることが、会社にとって過重な負担となる場合には除外されます。ここで言う過重な負担とは、バリアフリー化やエレベーターの設置などと言ったものです。
(4)障がい者雇用状況の報告義務
会社は、毎年6月1日時点の障がい者雇用状況をハローワークに報告する必要があります。
報告義務のある会社は、法定雇用障がい者数が1人以上となる事業主、すなわち現行法上常用雇用労働者数が45.5人以上の会社です。
雇用人数の考え方
原則として、以下のようにカウントをします。
- 所定労働時間が30時間以上の身体障がい者又は知的障がい者は1人
- 週20時間以上30時間未満の身体障がい者又は知的障がい者は0.5人
ただし、例外として、重度身体障がい者又は重度知的障がい者については、1人を雇用することをもって2人と算定されます。
また、重度身体障がい者、重度知的障がい者及び特定の要件を満たした精神障がい者である短時間労働者は、短時間労働者でも、1人として算定されます。
違反企業には徴収金の発生も
雇用達成率が未達成の常時雇用者数100人を超える会社には、不足人数1人につき障がい者雇用納付金として月額5万円が徴収されます。
さらにハローワークから「障がい者の雇入れに関する計画書」の作成を命令されます。
なお、その後の各種行政の指導等にもかかわらず障がい者雇用に適正に取り組まなかった企業については、厚生労働大臣に社名の公表をされてしまいます。
常時雇用者数100名以下であれば徴収はないかもしれませんが、社名公表の恐れがあるのです。
法定雇用率の改正
法改正により、平成30年4月1日から2.2%へと引き上げられましたが、令和3年(2021年)4月からは2.3%まで引き上げる予定となっています。
2.3%となった際には、対象となる会社の範囲は、常時雇用者数43.5人以上に広がります。
まとめ
義務とは言え、障がい者を雇用することは会社にとって大変なことでしょう。
そのため、適正な雇用を行った会社に対しては、国から調整金や報奨金、助成金などのサポートがあります。
従業員が30人を抱えはじめた位で、さらに事業の拡大を検討しているといった企業の経営者は、こういった義務があることも頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。